病的で危険、艶麗で甘美。それらを育む褥で二人は寄り添い続ける。

 ドラッグストアの店員の主人公は、華奢な少年と出会う。しかし少年の生まれながらの性別は女。しかし、太ることに怯え、胸の膨らみを日々憎む「少年」と主人公はパートナーになっていく。拒食症の少年の家に主人公は入りびたり、二人で甘美な時を過ごす。拒食症の人は、自分に優しい人に依存する傾向がある。主人公はけしてこの関係が共依存という「症状」でないとしていた。
 徹底的にカロリーを抑えた食事と、クラシック。そしてロリータファッション。主人公は永遠のお姫様。少年は王子様だった。
 そして二人は危険な病的遊戯に溺れる。リストカットごっこ、である。赤いエナメルを垂らして、「傷口」を作り、流れる血液を演出する。二人だけの世界で、二人で身を寄せ合い、互いを想い合って褥に横たわる。それが続けばいいと思っていた。しかし、事件が起こった。
 主人公の家族が「彼氏との同棲」が「嘘」だったと気づき、主人公を連れ戻しに来た。そして主人公は入院することに。ところが、主人公を訪ねた医師に、「彼を助けててあげてください」と言われる。病室で彼は死んだようにベッドに横たわっていた。

 果たして、二人は今後どうなるのか?
 病的なまでに閉ざされた二人だけの甘美な世界。
 女性でありながら自分の女性的な部分を憎む彼と主人公の関係は、けして今までのガールズラブや百合にはない空気感があり、新しい形の関係性が描かれている。
 この、むせ返るような花の香りに満ちた世界観に、溺れませんか?

 是非、御一読下さい。

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