紡がれる奇跡の連鎖

フェンス越しの純粋な恋愛が始まるのかな、と思いきや、複雑な人間関係が織りなすドラマが展開されます。

フラッシュバックする事故の記憶。自身の中に残る記憶。
何かを覚えていることの方が、よほど奇跡的なのかもしれないとさえ思わせるような深いお話でした。恋愛小説の枠組みを軽やかに越えて、過去から現在へ、現在から未来へと紡がれていく想いと奇跡の連鎖が此処にあります。

紙飛行機に、車のクラクション、瞳に映る光景。そして記憶。
様々なキーワードが、気心知れた友人たちや家族、思いがけない絆に紐づいています。現代を生きる我々も直面するかも知れない『選択』に関する迷いや苦悩もありありと描き出されています。

複雑な関係性を描きつつ、読み手を混乱させることはない。読み進めるうちに深いテーマが浮き彫りになってくる辺りは、作者様の筆力の賜物でしょう。

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