紡がれていく過去の記憶。絡まる魂の断片は絶望の未来に奇跡を起こす!

 ――始まりは紙飛行機なのかも知れない。

 これは、女子高生の朝倉希と大学生の明日香涼とのラブストーリー。

 紙飛行機というキーワードが物語を牽引します。

 明日香涼は謎の記憶に悩まされていた。やがて涼と希は付き合う様になるが、涼の記憶の断片に第三者の記憶が飛び込んできます。謎の記憶とは誰なのか?その記憶の先にあった過去は、誰が関係していたのでしょうか?


 ファンタジーの要素を持ちながら、物語の後半へ突入すると、切なさが止まらなくなってしまいます。親子間の愛情。恋人間の愛情。浮かんでは消えていく過去に伝えきれなかった想いが、お互いに繋がった瞬間は涙腺が崩壊してしまいます。

 繰り返されるフラッシュバックの記憶の断片に、垣間見た希の母親と、謎の記憶の持ち主の関係とは?そして繰り返される悲劇にどのような意味があるのでしょうか?



 もしも喧嘩して別れたならば、また何処かで偶然会う事もできますが、亡くなってしまったら、永遠に会えなくなってしまう。ましてや、事故ならば納得も出来ない。
 愛する人を失い、後悔だけが取り残されて苦しい日々が続く中、人はどうやって、いやどのようなキッカケがあれば前を向いて歩いていけるのでしょうか?


 奇跡とは信じるだけではなく、絶対に諦めず信じ抜く事で起こるのかも知れません。

 ――この恋は運命ではなく、小さな奇跡の物語――。

 
 あの頃に見た君の(あなたの)笑顔に、もう一度逢いたいから……。
 そんな主人公たちの声が聞こえてきそうです。

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