終末のラッパは鳴りやまない

作者 陽澄すずめ

183

63人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

地の底に埋め込まれたような息苦しさは、あの頃の閉塞感そのもの。
もがいたとしても、引き摺り込まれる運命しか視えないような日々。
一たび考えることをやめてしまえば楽になれる。見せかけだけなら。
けれど現実は冥土の土産に聞きたいことすら選べない底なしの暗闇。

この作品は五感で感じてください。


今でも震えが止まりません。

★★★ Excellent!!!

ウイルスパンデミック。
そこに描かれた世界は、ウイルスによって肉体的だけでなく、精神的にも経済的にも極限まで追い込まれた世界。
ウイルスよりも人間が怖さがあぶり出され、荒んだ社会に主人公はとことん痛めつけられますが、たったひとりの大切な少女とまっすぐ歩んでいきます。

退廃的でありながら、極めて現実に即したような舞台設定は、読み手に恐怖感すら与えます。

衝撃の結末やいかに!? あなたの目でぜひお確かめください!

★★★ Excellent!!!

パンデミックと化した現在。この世界は政府によって管理されている。謎の組織の回し者と化した死神と言われる存在。その死神の振るう大鎌は、デリバリーとして配る謎のドリンク類とは誰も思わないだろう。

生きていくのも、理不尽過ぎるこの世界。希望の見いだせない中で、果たして生きていく意味を、見いだせられるのだろうか?リアルに描かれた背景に、ただの創作上の話ではなく近未来にこの世界が待っているのではないだろうかと、疑心暗鬼になってしまいます。

タイトルにある終末のラッパとは、黙示録にある「天使が降りてラッパを吹いた。そして天変地異を引き起こした」とあるような、世紀末すら感じてしまいます。
なんとも遣り切れない悲劇的な結末に、心の奥をチクリと刺すような複雑な気持が湧いて来ます。

★★★ Excellent!!!

現実とフィクションの境目が分からなくなるほどリアルで息苦しくなる空気感。パンデミックに侵された生活の閉塞感と、それに対するある種の諦観が漂っています。
感染対策という名の日常に浸透していく理不尽は人間を直撃し、その人生すらまるきり変えてしまう。
その中で犠牲になるのは、つねに力の弱い者。
淘汰されるのは、いつも弱者たちであるということ。
そんな残酷さをまざまざと見せつける作品です。
負けることを分かっていながら戦わねばならない主人公の心がやるせない。
ぜひ最後まで読み切っていただきたいです。

★★★ Excellent!!!

 主人公は父子家庭で育って、大学に進学した。ところがその矢先、世界がパンデミックに陥った。謎のウィルスの蔓延によって、人々の生活は制限され、非日常はそれに慣れた人々の日常となっていく。
 そんな静止した世界で、大学を中退した主人公たち、フードデリバリーの精鋭たちだけは忙しく動き回っていた。指定された食事を、指定された場所に届ける。時には、サービスとしてドリンクを付けて。
 配達途中だった主人公は、同じバイトをする一人の女性に出会う。何度か顔を合わせる内に、二人の距離は縮まっていく。
 ところが、主人公は配達途中に酔っ払いに絡まれて、サービスのドリンクをその酔っ払いにかけてしまう。女性と一緒に自宅に戻った主人公は、人との繋がりを求めていた自分に気付くのだが……。

 一見、現代社会の風刺のようだが、ある仕掛けによって世界観はがらりと終末感を倍増させる。静止した世界と、動き回る主人公という、対立軸もブレがなく、機能していた。「動く・動かない」というお題に対して、ここまで完璧に応えられる御作は、見事の一言に尽きる。

 是非、御一読下さい!

★★★ Excellent!!!

もしかしたら、本当にこんな事情を抱えて生きてる人がいるかもしれない……そんな風に想像させられる主人公は、フードデリバリーのバイトをしています。
ある日。そんな彼は、同じバイトをする女の子に出会うのですが……

何を言ってもネタバレになりそうで言えないんですが、主人公の状況に考えさせられるものがあるし、あんな展開になるとは思いもしなかったのでビックリもしました!
感情をグワーッと動かしてくれるような短編をお求めの方に、おススメです☆

★★★ Excellent!!!

 ウイルスパンデミックを経験してしまった、今の社会を鋭く切り取った名作。この作品の完成度、本物です。
 地獄としか言いようのない世の中で、それでも人は生きていかなければならない。
 人は何のために生きていくのか。どうして生きていかなければならないのか。そして幸せとは何か。
 いろんなことを深く考える機会となる、これはそんな作品だと思います。

 正直、一言では表せない。だけどそれが、この作品の「深さ」を物語っていると思います。
 めちゃくちゃおすすめ。是非、読んでみてください!