エピソード10 海と波乗りと彼女と ロコモコ

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イイのが入ってきてる

ケイはそう言うと少しだけ沖にパドルをして素早くボードを反転させた

後方のうねりの速度を確認すると華奢な身体を弓のように反らせてパドルを始めた

彼女は完璧なタイミングで波を捕らえると、素早く立ち上がり水面を滑る板の後方に体重を乗せて深くボトムターンをした

波のトップに上がると板の前方にクロスステップで華麗に歩いた

まるでダンスを踊るように

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グライドするケイを目で追い、目線を少し上げると国道沿いに建つ ドライブイン虹 が見えた

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1時間程前に僕はドライブイン虹に到着した

ケイと店主が店から出てきて僕を出迎えた

店主はケイの恋人で、僕たちが通った大学のサーフィン部の先輩だった

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店の中に入り、僕とケイは僕たちの離婚に関する書類に必要な事を記入して印鑑を押した

家財の配分の事などの話も終えると

今日は来てくれてありがとう、離婚する前にどうしても彼と会ってほしくて

奥のキッチンにいる先輩と眼が合うと、彼はすまなそうに頭を下げた

僕も頭を下げた

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書類を鞄に入れ僕が立ち上がると

ねえ、今日は良い波なので少しだけ私と波乗りをしない?

と彼女は言った

キッチンから出てきた先輩からも是非そうしてほしいと切願され、断り切れずに僕はケイと海に出る事になった

*

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お互いに何本かの波に乗り、僕たちは波待ちの間に色々な話しをした

程良い時間に海から上がり、僕は店のシャワーを借りた

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着替え終わり僕が帰る事を告げると、店の奥から

ねえ、これを食べていって

とケイがキッチンから出てきてカウンターに皿を置いた

彼が作るロコモコは絶品だから、さあ早く

戸惑う僕を彼女は促しカウンターのイスを引いた

ありがとう、じゃあ遠慮なく

と僕は言い、奥にいる先輩にも一礼をした

席に座るとグルーピーソースの良い香りがした

*

ケイが言うように、そのロコモコは絶品だった

僕はサークルの合宿旅行でハワイに行った時に食べたロコモコを思いだした

それはカパフル通りにあるレインボードライブインのロコモコだった

*

確かに美味しいね、だから ドライブイン虹 なんだ...

僕がそう呟くと、ケイと先輩はキッチンの前に並んで微笑んでいた

僕は海と波乗りと彼女を好きになって良かったと思いながら、次のスプーンを口に運んだ

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僕と彼女と美味しいごはん 短編小説 8 - 8 = N @8-8_N

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