「たまご食堂」のオーナー兼コックである喜美さんと、そこにふらっと立ち寄った大学生の涼ちゃんを中心に、訪れるお客さんたちとのやり取りと、たまご料理を存分に堪能できるお話です。
喜美さんは面食らうほどのフレンドリーさでお客さんに接していくタイプ! 明るくて、勢いがあって、時には涼ちゃんが怒るほど。でもそんな喜美さんのことが大好きなお客さんが、たくさんいます。
対して涼ちゃんの方は基本不愛想で、何事にも消極的。でも妙に頑固なところがあって、喜美さんとの関係にヤキモキさせられることでしょう。でも、そんな涼ちゃんも喜美さんたちに影響を受けて徐々に変わっていきます。じれったい恋愛模様がお好きな方にもお薦めです。
何より特筆すべきは、喜美さんの作ったたまご料理を食べる、涼ちゃんの食レポ!! 彼が食べる際の描写は際立って素晴らしく、間近で食べるさまを見ているかのように楽しめます。とろけるたまごが、こう、目の前にあるような……! ああ、食べたい……!! これは最高の飯テロです!
近所にあれば絶対に贔屓にしたいお店、たまご食堂。
たまご好きの皆さま、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか(^^)!
本作品は、単に美味しい料理を描くだけでなく、料理がもたらす温かさ、家族の絆、そして人生の再出発という、多くの人が共感できる普遍的で深いテーマを扱っており、それらが、本作をより一層魅力的なものにしている。
『第3話 だし巻きは親子の絆』では、主人公の笠原涼太がアルバイトをするコンビニから始まり、たまご食堂での出会いを経て、人と人との絆の再生を描いている。
この話では、料理が持つ力、特に「出汁巻き」が、親子の心の溝を埋めるキーとして描かれている。
喜美というキャラクターを通して、「出汁巻き」という料理を通じた心の通わせ方を見事に描き出しており、喜美の料理に対する情熱と人を思いやる心が、茜とその父親の心の壁を崩し、やがて温かな絆を取り戻す過程が、読者の心を揺さぶる。
また、笠原涼太の成長も見逃せない。
当初は、他人との関わりを避けがちだった彼が、たまご食堂での経験を通じ、他人との関係性の大切さを学び、自らも変化していく様子が、この話のもう一つの見どころである。
作者は、「食」という日常的なものが、人の心を動かし、絆を深めることができるというメッセージを読者に投げかけているのだろう。