エピソード4 ニンジンのドレッシング と モヒート
8-8=N
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こんなに可愛い海賊がいたら、どんなにか素敵だろうと僕は思った
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土曜日の午後、渚は僕の家にいた
僕たちは駅前で食材を買い、二人で簡単な食事を作った
つきあって日の浅い僕たちの距離がぐんと近くなった気がした
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何か飲みたい物はある?
僕は手際のよい彼女の手元を眺めながら尋ねた
渚は最近覚えたというドレッシングを作りながら少しの間考えていた
おすすめがあれば何でも
ニンジンをすりおろしながら彼女は答えた
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僕は冷蔵庫からライムを取り出し2つのグラスに絞り
角砂糖とラム酒を入れて長いスプーンで混ぜた
氷と炭酸水を入れ、最後に冷蔵庫の上の鉢に植えてあるミントを数枚ちぎり、グラスに浮かべた
僕の淡々とした動作に目をまるくして、渚は手を叩いて喜んだ
グラスを渡すと、 うれしい と笑顔で答えてくれた
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モヒートっていうんだ
ヘミングウェイが溺愛したカクテルだよ
僕は微笑みを返しながら誇らしげに言い、カチンとグラスを合わせた
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僕たちは食事をしながら2杯目のモヒートを飲んだ
渚はラム酒の瓶を手に取り眺めていた
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サトウキビから出来たお酒で...海賊がこよなく愛したお酒だよ
そう言うと僕は小さく息を吸い
未来を恐れることは...すなわち現在の浪費である!
僕はジャックスパロウの真似をして演技をしてみた
なあに? と言って彼女は笑った
僕たちはパイレーツ・オブ・カリビアンの話をして食事を楽しんだ
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私の祖先はね、奄美群島で海賊だったんだって
ソファでくつろぎながら渚が言った
当時の薩摩藩も手を焼くやんちゃな人たちで、海賊をやめたら奄美の君主の一族として認めてあげるって言われたみたい
私はね、その末裔なのよ
彼女は少し酔った口調で話し、ライムを絞ったラム酒のロックを一口飲み僕を見つめた
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こんなに可愛い海賊がいたら、どんなにか素敵だろうと僕は思った
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未来を恐れることは...すなわち現在の浪費である!
彼女は舌がもつれ気味の口調で言い、僕に体を寄せた
そうよねえ? ジャック?
渚は微笑みながら僕の首の後ろに両腕を回した
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