人の怖さみたいな恐怖も感じる作品でした。冒頭と終盤の家を眺める場面、終盤の方でもバッチリ怖いの好きです。あと、ドアを開けるシーンも好きです。この雰囲気のホラーって、あんまり見ないんですが、彼女の気持ちを考えると、かなり現実味を感じました…。
寿退社をして以来、何年も会っていない友人宅に訪れる主人公。どれほど幸せな生活をしているのだろうと思いきや、そこに垣間見えてくる狂気。 ふと感じる異変。そこから映像で浮かび上がってくるような恐怖が次々と差し込まれていきます。起きる出来事もさることながら、元同僚が怪奇を迎える姿勢が、「女の恐ろしさ」を体現しているようでぞくっとしました。
三つのテーマが見事に活かされている作品です。「人間とは業の深い生き物だ」といいますが、夫、妻、愛人と三人とも罪深い行いをしています。ラストのその後が気になってしまう……。じわじわと恐怖が迫りくる作品です。
ホラーものの怖さのパターンっていくつかあると思うのですが、怪奇現象かと思ったら本当に怖いのはじつは人間だった、あるいは、誰かの仕業だと思ってたら怪奇現象だったのふたつのパターンは同時に存在しないことがほとんどだと思います。が、この作品はそんなめずらしいパターンです。導入部も直接的な違和感を伝える部分以外にも、じわりじわりと不穏な気配になっていく空気感が好みでした。語るとネタバレなのであまり詳しくは語れませんが、日常の一ページに滲む人間の生み出した狂気と怪異…的な話が読みたい方におすすめします。
情景や不気味な雰囲気が伝わる文章ですごく引き込まれます。そしてそれを一番恐れているはずの人物が……ぜひ読んでみてください。
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