“EM-2e575a-《メリダ=ティミス》が記す”
Ⅹ
親愛なる誰かへ――
昨日、私はかの聖堂の建設を終わらせた。
正直、これで正しいのか、まだ思い悩んでいる。
《タツミ》氏が故意にあの段階で建設を放棄したとして、私がしたことはその遺志に対する大いなる背信なのではないのか、という自問が私の胸の中に渦巻いている。
だけれど、やはりかの聖堂を建てようとした《ヒト》の遠い祖先のことを思うと、やはりこの建築物は完成させなければならなかった、と、そう私には感じられるんだ――いや、これもただの独りよがりかな。ただ、私がそう感じたからそうした。それだけの話なのかもしれない――すまない、やはりまだ混乱している。
でも、私がここに辿り着いたのも、なにか巡り合わせだったのだと、そう信じたいんだ。私の行為が旧い魂を――できれば《タツミ》氏の魂をも――すこしでも慰めることができたらと、そう願うだけだ。
そして、踏ん切りがついた、と思った。
私は探究の旅を止めようと思う。
本当は、ずっと前から考えていたことだった。ただ、きっかけが欲しかっただけなのだと思う。
そもそも私が
探究の旅は進めど、宇宙は当初の予測を遥かに超えた範囲で広がり続け、その果ては一向に見えてこない。
《もしかして、宇宙の果てなど存在しないのではないか》
皆、その言葉を口にしてしまうことを怖れている。そして、そこから眼を逸らしたまま、無窮の旅路の中でいたずらに疲弊し続けている。私にはそう思えてならない。
それでも私が
でも、どこに行っても同じことだ。
私は先の手記で、発見当時の《ヒト》の文明
どんなに遠く宇宙に散らばっていても、私たち知的生命体が繋がっていれば、そこには階層が生まれ、利権が生じる。その後はもう、お定まりの縄張り争い、癒着と足の引っ張り合いだ。
私はそういうことに、ほとほとうんざりしてしまった。
もしかしたら、ある日最前線を探索する高邁なひとりの
そんな時、出会ったのが《タツミ》氏が――《ヒト》が遺したあの偉大な建造物だったんだ。
私は誰かの遺した、“造りかけの
そして、途絶したその事績に
だけど、そこにある意志を引き継いで、決着させる、というのは、意味のあることだと、私は思うんだよ――もっとも、そんな意志などない、遊び半分で造り捨てたような物もあるかもしれないけれど、まあそれは問題じゃない、これは私の我儘だから。
でも、もしもそれがいつか誰かの魂の慰めになることがあったとしたら――そんなことがあったら、これほどうれしいことはない、と私は思うよ。
さて、じゃあ手始めに、私は《かぎろ・2f》銀河の《かなさめ》星系に行ってみようと思う。
あそこにはたしか、《シュカーギル》文明の
ふふふ、考えていると、童心に返るような、初めて星の海に漕ぎ出した時に感じたような、ときめきで脇腹が膨らむようだよ。
それでは、ここまでこの記録に目を通してくれた君に、尽きせぬ感謝の念を。
いつかまた、どこかで。
真心を込めて――《メリダ=ティミス》
造りかけの故郷 myz @myz
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