宗教観の違いといった非常に難しいテーマに挑んでいる本作。同じ『神』という存在を信じながらも、自分の『神』を中心とし他の『神』の存在を認められれない。
それはたとえ血の繋がった親や兄妹であっても……
弾圧されるルクス教にいる神威士のミック。弾圧する側のユス教を欺きつつ取り入るレイヤに妹のミナ。
3人の立ち位置は違い、世の中はまだ若い3人のことなど構わず巻き込んでいく。戦争は誰に対しても過酷な運命を背負わせるものなのだと感じさせられました。
世界観を凄く大切にしている作品で、背景である通貨や物価や仕事の様子、人々の生活なども細かく描かれています。
ページを開けば過酷な状況でも必死に生きる人々の生き様を観ることが出来るはずです。1度覗いてみませんか?
第一章(十話)を読み終えての感想・レビューです!
まずは一言……「小説」を読みたい方、間違いなくおすすめです。
本作は、中世ヨーロッパの世界観を借り、架空の宗教を創造してそれらを巡る対立を描いている作品です。
この作品に命を吹き込むには、よほどしっかりと物語の核となる世界観、つまりは宗教と、それらを取り巻く環境について細部まで作りこむ必要があると思いますが、まあその緻密なこと。
反対に、世界観の細かい説明だけがだらだら続いても、途中で読む気が失せてくるものですが、本作では第一章の早い段階でストーリーにも動きが見られ、見事に導入を成功させています。
第一章を読み終えて、思わず「ああ、面白い…」と唸りました。笑
★こんな人におすすめ★
・世界観が練られた小説が読みたい。
・キャラクターの「リアルな葛藤」が見たい。
・シリアス100%の小説が読みたい。
□良かった点
昔学校で、日本人のキリシタンが『踏み絵』をさせられていたこと、それが出来ずに処刑された人たちも大勢いたことなどを習った時に、「いや…絵踏むだけで命助かるんだから、踏めば良いじゃん…」と思っていたのですが、本作を読んで、「ああそうか、この時代の人たちにとって、宗教ってそんな軽いものじゃないんだ」というのが、納得できたような気がします。
もちろん、宗教戦争というのが昔から各地で起きていたというのは、一般的な知識として知ってはいたわけなんですが、本作のキャラクター達のリアルな描写によって、宗教とは単なる心の拠り所ではなく、「生き方」そのものなのだな、ということが伝わってきました。
すみません、少し脱線してしまいましたが、何が言いたいかといいますと、本作の良さは、架空の宗教を核としながらも、「圧倒的なリアリティ」のある描写によって、その世界観にどっぷりと没入できる点にあります。
私自身、「宗教」そのものに興味がある方ではないのですが、それでも十分楽しめましたので、中世ヨーロッパや宗教に明るくない方であっても、自信をもっておすすめできるかと思います。
これからも応援しております!
以上、水無月トニーでした。
以前から追わせていただいている作品です。
宗教を題材にしたお話ということで、非常に興味深く拝読させていただきました。
私も創作をする上で、その世界の宗教についてよく考えます。私たち自身に根付いているものを作品の中でも確立させておくことで、世界観により深みが出るからです。
前置きが長くなりましたが、この作品は宗教が世界観のフレーバーとして存在しているのではなく、宗教の信仰、また対立を主軸にしたお話になっています。普段考えない、もしくは敬遠されがちな観点から紡がれた物語は、人間の儚くも美しい心を描いています。
神様は、本当に私たちを救って下さるのか。
是非、皆様の眼でお確かめいただきたく存じます。