第20話 しっかり陰キャ極めてます。


昨日の報道陣とのやり取りは流れなかったみたいだ。


いや、一つのメディアが流していたがすぐにバッシングの嵐に襲われて止めたようだな。


加害者みたいな扱いに異議を唱えた視聴者が怒涛のクレームコールで一時某放送局の回線がパンクしたくらいだ。視聴者の力恐るべし。


ツイッパーでもかなり話題のニュースみたいだ。まぁ、滅多にない珍事件だからな。


現在進行形で専門家の放送事故とメディアの非常識で凄く盛り上がっている。日本は平和だなと思う。


なぜか【ケイ君に叱られたい】と【ケイ君美し過ぎる】がトレンド入りしていたが全て記憶から消し去った。


頭を抱えたくなる。穴があったら入りたいよ...。


浦和レッドも少し遅れてだが電話してくれた。動画を見て物凄く心配していたらしい。学校の送り迎えを是非やらせてくれと頼まれたがしっかり断っておいた。流石にそこまで迷惑はかけたくない。


一つだけ頼んだ事といえば俺の所属をはっきりとサッカー界で浦和レッドドラゴンズだと明記してくれとだけ。


そうしないと格闘団体から加入してくれと勧誘が激しそうだ。


テコンドーや合気道の教室の先生も電話で今回の騒動で起こりうる影響に気掛かりを示していた。しっかりケイ君は儂ら二人が責任を持って守るだってよ。


くぅー!カッコいいな本当に。この二人の師範代は幼馴染でいつも誰が一番の師匠か争っている。それって一番弟子を決める奴じゃないのと思うが......。


二人とも本当に優しく、サッカー選手になる夢を応援してくれている。いい人達に出会えたと思う。


また、自分の時間を出来る限りサッカーに使いたいから大会には出たくないと言った時も理解を示してくれた。


師匠達が俺の情報を隠蔽してくれたのと、大会に出ない事で今まで話題に上がらなかったのもある。


二人曰く、今の実力なら小学生相手には無双できるらしい。またジュニアの大会くらいサクッと優勝できるだとよ。う、嬉しいです。


そんな事を考えながらジョギングを終えてストレッチをする。この時間が何気に好きだ。しかし今日からまた学校だな。


毎日お世話になっている小学校は家から徒歩20分くらいの距離にある。


もちろん公立だが浦和はとても教育に力を入れており、様々なサービスが充実している。わざわざここに引っ越して子供を育てる家族もいるくらいだ。


教育方針も自主性を重んじるものであり、中々ありがたい。


因みにしっかり学校に行っているしサボったりもしていない。皆勤賞だ。


しかし年間二百日くらい学校に行く必要があるのはサッカー道をひたすら突き進みたい自分にとって痛手だ。


その為校長先生と直談判してしっかりボールを授業中クネクネする権利を獲得している。


「自分の将来を考えてタッチ感覚を磨きたいので、どうかご理解いただきたいです。校長先生お願いします!」


少し渋ったみたいだが何とか許しを得た。他の生徒に迷惑が掛かる事ではないと判断したようだ。理解ある校長先生で本当に良かった。


実際裸足でボール触るだけだ、そんなに迷惑がかかる事ではない。恥ずかしくないの?と思うかもしれないが、ボール感覚を少しでも磨くために必要な行為なので、それに俺自身の羞恥心はとうの昔に捨てた。素材ゴミにポイッ。


とある伝説のラーメン屋の店長も『成功してない奴はプライドを持ってはいけない』と言っていた。


周りの目を気にする時間があるなら努力し続けろ。普通の練習、常識の範囲内の努力などしていても特別な存在になれるわけない。


努力して成功を掴んでやっとプライドを持つ資格があるのだ。大した練習もしてないのに口だけでかい奴はよくいる。そんな存在にはなりたくない。


世界一を目指していると大口を叩くなら世界一努力しなければいけないと思う。



小学校の話に戻ろう、うちの学生の数はかなり多い。共学で六学年合計千人いる。行事もとても豊富で、陽キャならとても楽しい小学生ライフを送ることになる。


因みに俺は陰キャだ。陰キャ道をひたすら爆走中である。


【努力★】で表示されても良いくらいだ。累積時間は全小学生ライフだろうな。はっはははっはははは。


一番の原因は毎年自己紹介でかましているからだ。


一年生の頃は、


「初めまして!二宮ケイです!僕は世界最高のサッカー選手を目指しているから時間を無駄にできない!大事な事やってるから話しかけないでね!」


二年生になる頃には、


「二宮ケイ。話しかけないで。忙しいから。ボールコネコネは無視して。」


どんどん自己紹介は悪化していき、四年生になると、


「二宮。サッカー好き。邪魔しないでね。」


羞恥心を捨てた俺は陰キャラ道でバロンドール級だ。


まぁ、実際問題時間がないのは事実だ。【最先端サッカー学】を読み解くのは物凄く時間がかかる。


しかもやたらと科学的要素が入っているから難しい。


そこは無視して飛ばせばいいと思うかも知れない。しかし、全ては世界最高のサッカー選手になるためのメニュー作りや知識を身につける為だ。


「もし八時間、木を切る時間を与えられたら、そのうち六時間を私は斧を研ぐのに使う」と何処かの大統領も言っていた。


個人的な解釈だと、今の練習は全て研ぐ時間だと思う。しっかり研がないと自分が求めていている結果に繋がらない。それ以上を目指す時は必ず結果に結びつかないと思う。



また、俺は雰囲気が良いところで勉強したいが子供達は分別がなく、時々いじめが起きるのだ。しかし俺がクラスにいる以上それは許さない。


そういう時だけはしっかりと小学生相手に大人の怖さを教える。体は子供頭脳は...だな!


一人はあまりにも家族共々イカれてたので一緒に浦和を退場してもらったよ。


え?どうやってやったか?


それは内緒ですね。ご想像におまかせします。ふふふふふふふふ。


まあそうやってズケズケ言うし、無愛想だが一応友達は二人いる。


基本的には自分の鍛錬優先だけどそれでも仲良くしてくれる掛け替えのない奴らだ。本当に俺は幸運だと思う。


一人目は自称IQ140の天才君、阿部マモルだ。


偶々【最先端サッカー学】をまとめたノートを目にした彼が興奮して、倒れてしまった以来の仲だ。


眼鏡が良く似合うイケメンで頭もとんでもなく良いが、スポーツは絶望的にできない。


良く体育の時間になると顔が青ざめてる。どんだけ運動したくないんだよ。


因みに今マモルと二人で未来のサッカー理論をまとめた論文の執筆中だ。どこから知識を得ているのか知りたい筈なのに何も聞かずに協力してくれる。本当にできた人だ。


論文を書いているのには理由がある。世界最高のサッカー選手になる為には多角的に攻めたほうが良いと思ったからだ。


【最先端サッカー学】に載っている知識を再現するだけだが、それが中々難しくて難航している。


やはりどうしても研究対象が足りないからだ。


論文の信憑性として再現性が重要視される。


同じ実験を他の人が行ったら同じ結果が出るかどうかだ。そうしないと論文に載っているデータが本物かどうか分からない。


天狗様の事だからしっかりと再現性のある物を選んでくれたと思う。


しかし中々進展しないからはっちゃけて大学と連携する事にした。マモルの父親が日本最高峰の大学で教鞭をとっているからそこのコネだ。流石教育の都市浦和。すごい人たちが住んでいるな。


やはり人脈こそ正義だはっははははははは!


多角的にと言ったが理由はしっかりある。


世界一のプレイとサッカー界全体に貢献する研究結果。


歴代最強のサッカー選手は誰かと聞いて、どの国の子供達も日本人の二宮ケイと答えるくらいには上手くなりたい。


そして二宮ケイの名前をサッカー界の歴史に刻み、研究もぼちぼち論文としてまとめるつもりだ。


この2つで世界最高、ひいてはサッカー界の神になるんだ。


今のところそれがプランだ。


もう一人の友達は以前いじめられていた所を、俺の自己満だが助けたら仲良くしてくれている。


名前は大島ユウマ。身長は四年生にして165cmで、学年一背が高い。その背丈のせいでよくいじめられていたのだ。内容は胸糞悪くなるくらい悪魔的とも言えるもので、やった奴が更生することはないだろう。


しっかり元凶は浦和とバイバイしてもらったので問題ない。それ以来誰も彼の身長をバカにしていないだろう。


ユウマはガタイは良いが、性格は誰よりも優しく気遣いもできる。俺にとって癒しだよ本当に。


しかし今年は二人とも別々のクラスになってしまってちょっぴり悲しいのは内緒だ。


そのため、普段は一人だ。誰も好き好んでボールコネコネ男に話しかけたりしない。


べ、別に、全く問題ないが!


あまりにも絡まれない結果、授業中や休み時間は全て【最先端サッカー学】を勉強している。


チートだが、しっかりと時間を割いて勉強しなければ何も意味がないからな。


クラスメイトにはよく分からない事をノートに四六時中書いてるボール依存症だと思われてる。


先生にも時々注意されるがテストは全て満点なので、半ば諦めているみたいだ。


また、体育の時間では無双しているし、いじめた奴がどうなったか皆知っているので、誰もいじめたりしてこない。


小学生時代は運動できる奴が正義だからな。


時々女の子が告白してくるが全て断っている。


そういう時にキッと付き添いの子に睨まれたりするがな。


見つめ返すと顔紅くして、下を向いてしまい。


にらめっこで負けないぜ。流石美少年。あまりの体のポテンシャルに気分が良くなるな。


さてそんな事を考えていると学校に着いたようだ。登校中はかなりの視線を感じたがもう良い加減になれた。昨日の一件でいつもより見てくる奴の数が多い。はぁ。少しブルーな気持ちになる。


下駄箱に着き上履きを履こうとすると、


「ケイー!サッカー団入ってくれよ!一緒にサッカーしようぜ!!」


うげ、俺の苦手な奴トップを独走中の奴が....。こいつの名前は、

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