第10話 お金が足りません
はぁー
なぜ俺が溜息をついているかというと、それは最近四苦八苦している事があるのだ。悩みに悩み抜いているのだがどうすればいいのか......
その問題は設備なのだよ。俺が14から15歳になる時に必要なトレーニング設備がこの時代には無いのだ。
まだそこそこ猶予はあるがどうしよう。俺が欲しているトレーニング設備とはホログラムを使ったものだ。密室を作り壁から絶え間なくボールが撃ち込まれる。それを特定の指示に従いホログラムで作られた点に向かってパス、シュート、ドリブル、空中戦等と瞬時に切り替え行わなくてはならない。空間把握能力を極限まで鍛え上げ、それに伴って向上する落下地点を予測する力。
また加えて予想外のパターンを何万通りと用意しており、密室で行うため、絶え間なく指示に従い鍛錬しなくてはならい。訓練映像を観たがあれはいじめレベルのシゴキだ。
また予測不可能な場所に繰り出されるボールを限られた時間で指示通りに完遂しなくてはならないため瞬発力や状況判断能力の強化にも最適だ。
将来育成大国に名を連ねる中国が開発した訓練施設だ。元々はVRゲームで使われていた技術を応用した物だが、
それをどうやって用意するんだよ【最先端サッカー学】よ、とほほほ......
でもよく見てみると日本でも作れるくね?って思う。まだ時間はあるし、カスタマーオーダーメイドで作ってほしい。10年前から頼みこめば形だけでも完成するだろう。
だが問題点が.......資金だ。
お? 確かビットコインってこの時期できたばかりだよな。確か最初は1円以下か、1円くらいで取引されいて、十年後には170万以上になる。ぐっじゃぶ俺。さあさあさあ、こういう時の為に未来の知識というものがあるのだ!
よし早速パパンに頼んでみよう。まずは軽いジャブから。
「パパ〜最近会社どう〜?」
「おっよくぞ聞いてくれた!結構順調だぞ。第2工場を建てようと思ってるくらいにさ」
「そ、そんなに順調だったんだ〜へ。そのパパ、頼み辛いんだけどお金少し貸して欲しいんだ」
「何言ってるだ〜まだ年長さんだろ、たく、幾らくらいだ」
「百万円くらい」
「「百万!?」」
「な、何にそんな使うのよ?!」
「ママ、実はさあー投資したくて、ビットコインって言うんだけど知ってる?」
「ビ?なんですって? ゲームなの?」
という会話を朝からしまして。なかなかお金を貸してくれない。今は市場価値が理解されていないから安いのだが直ぐに値段が高騰してしまう。
100万が17億くらいになるになる。そうすれば設備投資なんて楽ちんさ。
親に迷惑かけずにサッカー留学さえできる。ふふふっふ。
更に儲けたお金をテスラ株に変えてさくっと売却するのさ。くくく、10代にして億万長者だ。はっはっははっははは!
地味にビットコインの凄さを伝えていくしかない。こうみえて外国人相手に営業してたからな。あっ、あまり役立たないですねパパン日本人。純ジャパやんか。
クッ交渉は難航しそうだぜ。なんとしてでも破綻させないっ!
後日根負けしたパパンからしっかりお金を絞り取りました。俺が言うのも何だが我が一族は押しに弱いのかな....?わいも含めて。
◆◆◆◆◆
さてさて古川園長先生が練習相手に名乗りを上げてから1年ちょうどたった。相手は俺のこと弟子だと思っているみたいだ。いつも俺の事を自慢している。時々大宮アルディー時代の後輩とか連れてきて俺の練習を見せている。喧嘩退団とか言ってたが仲直りできたみたいだな。
だが、おいっ、俺の練習方法広めないって約束したじゃないか。
たく....今回だけですからね、もぐもぐ。
文句を言うとうまい棒をくれる。
ちっ精神年齢が体に引っ張られてるからって食べ物でこうも良いように......
何たる屈辱。
大宮アルディーの訓練生や若手が俺に感化されたみたいでよくこっちの練習場で特訓している。なんでも5歳児がこんなにストイックに頑張っているなら俺たちもできるだとよ。悪かったな変態レベルのストイックで。へっ?言ってない。すみません勘違い。えへへへへ。
その結果か分からないが今季の大宮アルディーの成績はとにかく良く、一部昇格も狙えるそうだ。
ベテラン勢も若手の熱気にやられたのかな? 試合映像観てみると動きがキレッキレだ。
結果に繋がって何よりだ。まあ、しつこく将来下部組織に来てくれと誘われるのが玉に瑕だ。この前なんてスカウトの人が来て腰を抜かしてたよ。
いや、まだ幼稚園児なんで......と言って迷惑そうな顔をしてやった。
隠せていたかどうか分からないが、めちゃくちゃ嬉しかったよ。モチベも上がりまくりさ。だがもう少しポーカーフェイスを身に着けたいな。
ちなみに園長先生は俺のレベルにしっかり合わせてくれている。その為か、とてもやりやすい。
毎回少し厳しい場所にボールをくれたり、1レベル上のパフォーマンスを要求してくる。俺の訓練スタイルにバッチリ合っている。
ちなみに練習時間は1時間から3時間に増えている。ふたりでできる基礎練習に移行したからだ。これが大成功でどんどん俺の技術レベルが上がっているのが分かる。
毎日、昨日はできなかった技、前日より少しミートできた回数が増えたり。コツコツとだが確実にレベルアップしている。
報告と言ってはなんだが、我が家に新しい家族が増えた。二宮ワタル君だ。4歳も離れているがもーなんて可愛いんだ。最近は、にぃに、にぃにと俺の後を付いてくる。練習にも付いていきたいみたいだが流石にまだ2歳になったばかりなのでお母さんがそれを許さない。
俺が公園で昔倒れて以来少し過保護になった気がする。いや普通か.....昔が放任主義だったからそう思うだけか。
両親とも俺のサッカー馬鹿具合をしっかり把握したみたいで、最初は少し心配してたみたいだが、今では二人ともこういうものだと思っている。それにパパンもママンもすっかりサッカーファンだ。やったね。
最近は休日にパパンと一緒にパス練習している。毎日クタクタで疲れてるのに付き合ってくれるのだ。なかなか上手く、速いパスを出してくる。俺はそれを体全体を使い完全に勢いを殺す。ピタリと足に止め、返す。これを繰り返すのはなかなか神経を削る。
またドリブルにも力を入れ始めている。この時代にはまだない、未来の選手から技やフェイントを貰い受け、自分のものにしていく。はっはっはははは、どうだ未来のバロンドール受賞者の技は!
まぁ、一部はアジリティが育たないと効果を発揮しないものもあるが、何事も挑戦である。
ドリブルは基礎技術における『運ぶ』に当てはまる。正直この運ぶの練習が一番好きだ。現代サッカーでは組織力こそサッカーで常勝するのに必要だとデカデカメディアで言われているが、そこにただの個人技で計算され尽くした壁をぶっ壊す。
かあーーー!最高にかっこいいじゃないか。
実況のバグる声はさぞかし聞き応えがあるだろうな。
最近改めて実感した事なのだが、【精密操作】はかなりやばいという事だ。
【最先端サッカー学】に載っている未来の技を一度見ただけで、形だけでも成功するのだ。
もちろん完成度を上げるためには自分の動きを録画し、それを見て修正していかなくてはならない。だが形だけでも成功するという異常を理解頂けるだろうか?
一つの技を習得するのに1年や2年かける人がザラといる中で、たったの一回でイメージしたことを限りなく完成に近いパフォーマンスとして繰り出す。
まだ習得できていない技や、実践レベルに達していないものも多いが改めて自分の貰った能力のすごさに震え立つ。
勿論、まだまだ完璧には程遠いがな。こういうのはしょうがない。コツコツ鍛錬あるのみ。
俺の座右の銘は1に鍛錬、2に鍛錬、3に鍛錬だからな。
はっはっはは!
さてワイが通う幼稚園の事だが、基本的に2時には降園してもらうのだ。園児の預かりも行っているが不思議と使っていないみたいだ。
園児達が降園したあとは園長先生と一緒にストレッチ。その後基礎技術練習。最後にミニゲームの1on1を行い俺がボロ負けするという。
ん?そんなチートあるのに負けてるんじゃねえよ下手くそ?
いや相手が元J2リーグ出身だからって舐めてませんか?
元プロであり確かな努力の痕跡、それに才能に後押しされた実力。垣間見れる熟練の職人技、本当に上手い人なのだよ。性格さえどうにかなれば、、残念だ。いや、本当に残念だ。
やはり技術力の違いもあるが圧倒的な肉体的性能の差が顕著に現れてる。手加減してくれているが、幾ら裏をかいても後の先であっという間にボールを取られてしまう。こればっかりはしょうがない。
というか大人げないんだよ全く。最近は俺たちの練習に混ざってくるアマチュアの方がちらほら。園長先生の紹介で園児が帰った後に設備を使わせているらしい。
もちろん大人用のゴールもあるんですよ。
ちなみにうちの幼稚園には山があります。数年に一度は誰かが迷子になるほどそこそこの規模を誇る森崎山がそびえたっている。
もうすぐ卒業だが、フィジカルトレーニングを行う時期が来たら森崎山を使わせてもらおう。園長先生に頼めば使わせてくれるでしょ。
さて今日もコツコツ累積時間を稼ぎますか。目指せ新しい【スキル】獲得。
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