第30話 話題の化け物
ツイッパー
黒のエクリプスに揺られ東京アリーナに向かう。そう、選んだのは21年に販売予定の最新モデル。
カタログを見て一目惚れした初めての愛車だ。
しかし今世ではまだ運転できないので、いつも浅井さんにお世話になっている。
浅井さんには感謝の念が尽きない。
「またか...........」
今日もマモルとユウマからリンクが送られ辟易する。その内容は黒歴史の塊だからだ。
【9歳のバケモノ現れるwwww 12試合56ゴール29アシスト】
《リプイート3.4万 いいね7.3万》
リプ01:
>全ゴール動画のリンクはこちらです......
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リプ42:
>なに今の動きw 速すぎて見えんww
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リプ43:
>成績エグ過ぎるwwwwww
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リプ44:
>日本代表に少年サッカーさせたらこんな感じか?w
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リプ45:
>こんくらい俺にもできるわ。騒ぎすぎ
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リプ46:
>歴代ゴール数をぶっちぎりで更新中やんwwwwww
あほww
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リプ47:
>最低ハットトリックってバグってるだろ
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リプ48
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【格闘美少年まさかのサッカー界進出】
.......写真無断使用不可
#蹴られたい#私をボールにして#圧倒的な美
リプイート9.1万 いいね20.3万
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リプ134:
>イケメン過ぎwww ケイ様フィーバー
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リプ135:
>踏まれたいいいい、蹴られたいい!
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リプ136:
>一緒にバキューナ、ズキューナことしたい!!!
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リプ137:
>おいおい、まだ9歳だぞ!!
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リプ138:
>.....アイシテル...ワタシノ王子様
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リンクを開くとスマホの画面にはゴール集動画と澄まし顔の写真が万超えのリプイートされている。
俺って対戦中あんな歪な笑顔を見せながらプレイしてるのかよ!羞恥心で心が死にそうだ。
「.......あ゛ー!!!!!」
恥ずかし過ぎて髪の毛をわしゃわしゃと無意識に掻いてしまう。これが万越えイプイートだと.....
格闘美少年?ワカラナイ。何も知りません。
そうこうしている中にピカピカの新車に揺られ東京アリーナに到着。浦和ジュニアの仲間たちと合流してアップを始める。
綺麗な芝生に2万人以上収容可能な巨大な会場。日本人の建築技術の結晶ではないだろうか。
また最近のサッカーフィーバーに乗り遅れないためか、次々と企業がスポンサーとして参入しており、浦和ジュニアと協力し、SNSで少年サッカー推進を派手に宣伝。
結果ハットトリック集や顔写真がネットに流れ、かなり名前が知れ渡ってしまった。
それに加えて最低ハットトリックという意味不明な結果を残し続けるサッカー少年が突如現れたとニッチな層である少年サッカーファンが全国から集まった。
そしてネット予約によると、ジュニアサッカーでは異例の人数が会場に来るらしい。
元々U12のサッカーに興味がないサッカーファンですら集まる程この決勝戦は熱く燃え上がっている。
......予選だぞ?
「ケイ君、今日も頼んだよ」
「おう。点を取るのは任せろ。守備は頼んだ」
ジュンが自信に満ちた表情で話しかけてきた。初戦に見せた弱々しい表情と打って変わってとても頼もしい。
本当に彼の成長は目を見張るものがある。自分の才能である俯瞰を使いDFラインを完全にコントロール。
今では守備の要と言ってもいいだろう。
過酷な日程で試合を重ねていくうちに無駄なところがそぎ落とされ、洗練された動きを見せるようになった。
攻守共に浦和史上最強と名高いこの世代。名前に恥じないようにしっかり今日も勝たなければ。
「ケイ君、いやキャプテン。ワワちゃんの為にも今日は勝たないとね」
「な!ジュンまでからかうなよ......」
「ははっはは、ごめんごめん」
他のチームメイトにもからかわれ、あれやこれやとしているうちに会場は埋った、
「「頑張れー!!東京バイエン!ダ埼玉になんか負けるなー!!」」
「「お高くとまってる品のない東京バイエンをボコボコにしろー!頑張れ浦和!」」
トップチームのファンなのだろうか?ジュニアにかける言葉かよ.....
熱狂的なファンから激励を貰い受け、試合が始まろうとしている。
雑音を聞き流し、芝生を踏みしめピッチの感触を確認する。目を瞑り、呼吸に集中。水の中に落ちるイメージで息を吸って吐く。
昂ぶっている気持ちを落ち着かせ、精神を統一。
東京バイエンFCに視線を向けると、すでに相手は準備ができているのか威圧的な空気をチーム全体が出し、睨んで来る。
関東一を決める戦い。相手は全国大会最多出場の記録を欲しいがままにしているチーム。
徹底したフィジカル重視。体格がいい選手を集め、チームを構成する。平均身長は164cm。彼らは6年生になったばかりの実質5年生なのにこの体格。うらや...けしからん!
チーム随一の巨躯、エースの伊藤佐助はなんと172cm。小学生の体格ではない。
そして俺はこいつを知っている。なんせ彼は日本サッカーを牽引する選手に成長するからだ。
【最先端サッカー学】には未来の欧州サッカー連盟主催、大陸選手権大会(CL)の舞台にて初めて日本人としてゴールを挙げたストライカーと記載されている。
またその話題性やエリア内での勘の鋭さから日本人初のバロンドール候補者にノミネートされたほどだ。
投票数は最下位だったもののそれでもノミネートされたこと自体が偉業だ。
日本人離れしたフィジカルと体格、同時にかなりエゴイストであり、あまりにも自己主張が激しくチームから放出されてしまう選手でもあった。
そんな未来のスターと合間見えることが出来ると思うと胸が熱くなる。
ちらっと最前列の保護者席に目を向けると、痩せ細っているものの俺の大好きなお父さんがみんなと来ていた。
使ったことがない撮影道具一式を持って悪戦苦闘している姿にくすりと笑ってしまった。
最近少し生意気になってきたワタルとお母さんもいい笑顔を見せている。
「ふぅ...........よしやるか」
今日はなんだか特別な気分だ。なんせ初めて試合を家族に見せるため少し気恥ずかしい。無理して来てくれたのだろう。
だからこそ今まで精一杯愛をくれた両親に少しでも恩返し出来るよう、最初からトップギアで行かせてもらおう。
自分に課している制限はもう止める。少しアホくさいし、なんだか対戦相手に失礼だ。
だがそのおかげで世界的にも珍しいプレイスタイルを実戦レベルまで引き上げることができた。
足先を使い軽くジャンプし第二の心臓である脹脛を使いポンプのように血液を全身に送る。
体から蒸気が溢れて出て体は完璧なコンディションだ。
さて今日完成させよう。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
東京バイエンFC
「おい佐助。あのチビのプロフィールは頭に入れたな?」
「.............」
「おい!今日は俺らがあの化け物につくんだぞ!」
「ちっ............」
「いいか。よく聞け。あの10番は左足でしかシュートしない。完全レフティだ。遠・中・近とシュートを打ち、ドリブルは成功率は今大会驚異の100%、だが俺ら三人で囲めば必ず仕事をさせずに済むだろう」
「....ウゼーな。わかってる」
「そうツンツンするな。最大戦力を完全封殺するのが俺らの仕事だ。フィニッシュまで絶対に持って行かせるな」
「.........」
「頼んだぞ」
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