第15話 【スキル】の披露

浦和レッドドラゴンズ セレクション会場


二次試験 8v8


ピっ!

主審が開始の笛を吹く。


相手ボールで試合が始まるみたいだ。


それにしても今日は絶好調だな。


どうやら俺はプレッシャーが掛かるとより良いプレイができるみたいだ。


さくっと淀みを見つけカットする。やる気あるのかよ。


適度な緊張感がプレイの質を一段階上げてくれる。


因みに8v8って人数減らしたミニゲームと思う人も多いが、この人数制は日本サッカー協会が少年サッカーに導入したものだ。


子供達がもっとボールに触れ、上達するのを目指している。


人数が多ければその分試合でボールニ触れられる時間は少なくなるからな。育成重視の為だ。


フィールドの大きさは横68m✕縦50mで大人の11人制サッカーより半分くらい小さい。


つまりゴールまで距離が近いということ。


ピっ


ゴーーール


これで7点目。流石日本の才能を集めたセレクションだ。まだ諦めていないみたいだな。精神力の強さは認めよう。だがテンプレ勇者が覚醒する事はない。



そろそろ本気出すか。試合時間も残り10分切った。丁度いいだろう。


「.............【ゾーン】」



そう呟いた瞬間、自分の集中力が極限まで高まったのが分かる。周囲の音や風景などが消えた。感覚が研ぎ澄まされていく。


色褪せた世界で心と体が完全に調和した無我の境地だ。


俺に4人の選手が向かってくる。これ以上無様な姿を晒すわけにはいかないと決意を固めた表情だ。闘志が俺の皮膚をピリピリと焼く。



そんなDFを見た俺はぺろりと唇を濡らし、笑みを浮かべる。


「本気で........行くよ」


言葉を聞いたDF達に僅かな動揺が見えた。


その隙を突き、俺は一人目の大柄選手の股の下にボールを通す。


あまりの屈辱に顔を歪ませる相手選手。


頭に血が登ったのか、死角から完全ファールになるスライディングをかましてくる。


普通の選手だったら倒されてしまうが、俺の【空間把握】がしっかりそれを捉え最小限の動きでそれを躱す。


これには試験官やコーチ陣も驚きの声を上げる。なぜなら今のは完全な死角からの動きで、本来なら分かるはずが無い。


たとえプロであろうとも躱せなかった筈だ。


この事実にコーチ陣や相手選手は恐怖する。


ただ物凄く上手い選手が点を取っているのではなく、何か特異な存在。


体中の血液が逆流してしまう程恐怖を感じる選手達。【空間把握】という能力はそれ程までに【スキル】を持っていない者と差を作ってしまう。



一人目の二の舞にはならない様に相手DFが冷静に俺を見る。そこでわざと後少しでボールを奪えそうな位置に置く。


足が触れそうな瞬間インサイドでボールをスライドする。


まるで足に磁石が付いているみたいに美しい動作。


俺のボールコントロール能力は常に軸を捉える。完璧に決まったダブルタッチで相手を抜き去る。


3人目はボールは弧を描く様にボールコントロールするマルセイユルーレットで突破。


世界で一番華麗と言われている技だ。


そしてルーレットの勢いを瞬間的に停止させ、加速し緩急を付け最後の選手も置き去りにする。


ゴールキーパーと一対一になる。こんなにも早く全DFが突破されるとは思わず、中途半端な位置にいるキーパー。


それを目の当たりにした俺はヒールリフトからのループシュートを撃つ。


ボールが一瞬キーパーの目から消える。その一瞬の不覚をしっかりと突く。


かしゃっとネットを揺らす音が後ろから聞こえ膝を付くキーパー。


ーーーーー8−0


他の選手達も膝を付いて頭を抱えたい気分だった。


この場にいる選手は先程の4v4のミニゲームでもっと苛烈な点差を経験した筈だ。


しかし、今のスーパープレーであっさり強靭な精神力を砕いた。


これ以上何をやっても、これから幾ら努力してもこの二宮が行ったプレイは自分にはできない。


そう残酷にも思わせてしまった。


残りの16人は二宮と対戦しなかった事を神に感謝したと後の週刊誌に載る程選手に恐怖を与えたセレクションは二次試験の幕を閉じる。




このセレクションは浦和レッドドラゴンズ設立以来一番多くの監督、コーチ、運営関係者が足を運んでた。


4v4の試合を見た多くの監督やコーチ関係者を呼びまくったからだ。


「日本サッカー界に革命を起こす選手が来た!」


現場のスタッフに言われ普段現場に来ない重鎮達が意気揚々と会場に集まった。


セレクションの最終試合を見た重鎮や関係者達は魅了、恐怖、戦慄、希望、様々な気持ちが混ざり、試合が終わってるにも関わらず置された簡易ベンチから立たない。




因みにこの後三次試験の面接官を誰がするかで緊急会議が行われた。今年一難航したとは言うまでもない。




  ◆◆◆◆◆◆






『とあるスレにて』


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【Jrサッカーファンが集まるゆるいスレ】


-才能の原石を見つけよう-


1:名無しのお兄さん

『Jrサッカー中心のスレです』

アンチはNGです。とてもゆるいです。


一緒に才能の原石を見つけましょう!


2:名無しのサッカーファン

初めまして〜最近の注目サッカー少年はなんと言っても....


°


°


°


°


1023:名無しのおじさん王


おいおいおいおい!今日やばい子おった!

セレクションの4v4ゲームで12−0で勝ち、


その内訳9得点3アシストだぜ?バケモンだろwwwwwwwww その後も2桁差勝利もうあかんん!惚れた.....



1024:名無しのサラリーマン王

10分でやるあれでしょ?やばくない?

ーーーショタ覚醒はやめてくれ



1025:名無しのショタコンJK王

はっ?! 詳細プリーズ はよ!写真



1026:名無しの食いしん坊

また凄いのが出たな〜 名前は?



1027:名無しのピクシー

エグすぎwww

その後の8v8気になる。はよ。



1028:名無しのおじさん王

反応早www ごめん名前は言えない!


8v8はもっとやばいよ。

4人で止めようとするもボール掠りもしないしww もう言語化できない。


それに最後のあのプレー......(放心)



1029:名無しのサラリーマン王

化け物じゃん。これは和産メッシ誕生じゃないか?



1030:名無しのサッカーファン

流石にそこまでいかないでしょう〜

今年は周りが不作だからじゃないの? 日本サッカーはダメダメだし〜


1031:名無しの食いしん坊

仮に不作でも一定レベルのプレイは出来るはず。それなのに9得点3アシスト。やばいw 



1032:名無しのおじさん王

サッカー少年育成に携わって来たけど、今までの人生で見たことないレベル。



1033:名無しのサッカーファン

え〜ほんとに?じゃあ何で今まで無名だったん



1034:名無しのおじさん王

知らん!だが彼が日本サッカー界に来た以上、時代が変わるぞ。



1035:名無しのピクシー

これからが楽しみだな〜

もしかしてU12に選ばれたりして



1036:名無しのサラリーマン王

今後の活躍にもよるけど楽しみだな。おじさん王がそこまで言うの初めてじゃん。



1037:名無しのおじさん王

日本人初バロンドールも夢じゃない!!!



1038:名無しのサッカーファン

期待しないで待ってるよ〜




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




『とある重鎮達が集まる会議室』



「だーかーら!この前ジュース奢っただろ!俺に面接させろよ!」


「ジュースくらいでい • や • だ!」


「ここは私が行こう、長年浦和に貢献してきた私が。」


「なーにをー、そしたら無駄な予算を削減して、育成費に回した俺が一番貢献してきたぞ!」



「今日は俺が先に会場に来たぞ!だから俺だ!」


°


°


°


°



「はい俺に勝ち〜じゃあ俺とコーチ陣が面接をする事で決定な〜」



「クソっ!!無条件降伏しろよ!全ての条件を飲め!必要なら社用車や運転手も付けろ!」



「くれぐれも今日の受付の件に対して謝罪しまくれ!土下座も頼む!必要なら靴もなめ.....」



「おい!受付は懲戒免職だ!ふざけてるんじゃねーぞ!上野!部下の管理くらいしっかりしろ!」



「懲戒免職の件で票決を行う.......満場一致だな。しっかり二宮君に2度とあの様な事は起こらないと伝えてくれ!」



「全く子供の前であることないこと言って、帰れコールだと?!おい!今すぐ人事部の奴をよべ!今日は徹底的に問いただしてやる!本人も呼べ!!」

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