一筋とて天照らす行く末を、仰ぎ見る。

人生。まだ高校生の僕ですら何度も停滞感や閉塞感に苛まれた経験があるのだから、これから何十年、長い歩みの中で人間というものはその足を鈍らせたり、なかなか変わらない景色に鬱屈さを覚えたり、苦しんだりするものなのだろう。
本作は洞窟探検という一見子供じみた遊びの中に、人生という遠大な旅路を投影する。
むしろ、高校生というまだ完全に大人になりきれていない少年の人生を「洞窟」に喩え、苦悩しながら己を探し、明日に差す光へ気づく――そんな青春の未熟さ残る1ページを、「洞窟探検」という言葉の幼気な印象に重ねたのかもしれない。

一寸先は闇のような逆境とて、完全な暗黒ではない。
ときには振り返って来し方を顧み、行く末に天照らす一隅があることを知る。
社会、経済、進路、人生。僕もそうだが、多くの人々が行き詰まり、苦悩に苛まれるこの頃こそ、この時代だからこそ、それを忘れないことが大切なのだろう。
新型コロナウイルスに蝕まれた世界が探る『出口戦略』、それすらもこの「洞窟」に比喩できてしまいそうで、本作の無限性に戦慄する。そういった混迷極める洞窟の中で誰もが求める「出口」のヒントを、本作は与えてくれるのだ。

迷える子羊、天岩戸の先を仰ぎ見よ――そう語りかけられているように感じた。