★★★ Excellent!!!
これは、『空』という概念が変化した遠い未来の物語。 ハルカ
また、作者の新たな一面を見た。
空にはクジラが飛び、人間は進化してエラを持ち、海中で暮らしている。
冒頭を読み始めてすぐに、なにか素晴らしい物語が始まったに違いないという期待が膨らむ。
SFとジュブナイルをかけ合わせたような世界観。
おのずと文中には世界観の説明が多くなるが、文章はあくまでもわかりやすく心地良い。
作者は状況の説明をするのがうまいと(私の中で)定評がある。その文体と作品の世界観が見事にマッチしていて素晴らしい。
また、描写の美しさは同作者の『愛するは罪、ソドムの二人』を彷彿とさせる。
(https://kakuyomu.jp/works/1177354054894150655)
チラチラと存在感をただよわせるクジラの描写もユニークで面白い。
作中には、主人公とヒロインのほかに、研究者と呼ばれる人たちや過去の生活様式にこだわる人たちの存在が書かれている。
彼らはそれぞれ異なる考え方を持ち、憧れを抱いたり、前時代の生活にこだわったり、新天地を求めたりしている。それぞれの行動にきっと正解はなく、同時に間違いもないのだろう。
彼らがそれぞれ自分の考えをしっかり持っているため、読みごたえのある作品に仕上がっている。特に、ヒロインからの魅力的な提案に対して主人公がどう答えるのか、というシーンが印象的だ。
そして、主人公とヒロインの考え方の違いによって『空』の定義…
続きを読む