第6話 姫宮さんがいつもと違う!
次の日、僕が学校に行くとクラスのみんなが僕の顔を見てびっくりしていた。
そうだ、昨日めちゃくちゃ殴られてパンパンに腫れて、傷だらけだったな。
「おいおい貴志、なんだよその傷。大丈夫かよ。」
涼真が心配そうに話しかけてきた。
「うん!大丈夫だよ!超スーパーダイナミックにこけただけだから!」
「こけたって嘘だろ!?絶対それ殴られてるだろ!!」
「あー、間違えた間違えた!こけてから、猫にパンチもらったんだ!あの猫、なかなかいいパンチ持ってたなぁ〜。」
「嘘つけ!!」
なんて言いながら涼真とわちゃわちゃしてると、姫宮さんがやってきた!今日もかわいいなぁ〜!!
「姫宮さん!おはよう!!」
「おはようございます。」
「えっ?」
え?え?え?今なんて言った?僕のおはように対して、おはようございますって言ったよね?マジだよね?幻聴じゃないよね?嘘じゃないよね??
やばーーい!!初めて姫宮さんからあいさつされちゃったよ!!やばいやばい!!これは記念日だ!姫宮さんにあいさつされた記念日だ!!祝日にしよう!!やったーーーー!!
「やったーーー!!!姫宮さんにあいさつしてもらっちゃったーーー!!やったやったやったーーー!!!!」
声に出ちゃってた。
「そこでキャンキャン吠えてる犬。あいさつくらいでうるさいですよ黙りなさい、私だってたまにはあいさつくらいします。」
「ごめんね。初めてだったから興奮しちゃって!」
姫宮さんは僕を睨むとそのまま隣の席に座った。チラッと見ると少しだけ耳が赤くなってた!!
これは大きな進歩だぞ貴志!!昨日ボコボコにされた甲斐がありましたよ!!この調子でがんばるぞ!!
びっくりしすぎて意識が飛んでた涼真が我に帰って話しかけてきた。
「おいおい貴志!どんなマジック使ったんだよ!あの冷姫にあいさつされるなんて!!どういうことだよ!!」
「いやぁ、僕の思いがついに伝わってきました的な??」
僕はキメ顔でそう言った。
「う、嘘だろ。絶対詳しい話聞かせろよな!!」
ふーはっはっはっ!!いやあ、最高の気分ですなぁ!!こ、この調子で、昼ごはんも誘ったら来てくれるのかな?な〜んて!!調子に乗ってるかな?いや、覚悟を決めろ貴志!今ならいけるって!でもなぁ〜、期待しすぎるのもなぁ〜。いや、僕はポジティブだったはずだ!!絶対いける!!
気づくともう昼休みになっていた。姫宮さんはいつものように教室から出ようとしていた。やばい、早く言わなきゃ!
「ひ、姫宮さんちょっと待って!!お昼ごはん一緒に食べない?」
焦った僕はそう言っていた。
「……勝手にしてください。」
え?マジですか?姫宮さん。お昼ごはんもオッケーですか?やばいってーー!!これは僕の時代来てるってーー!!嬉しすぎる!!こんな日が来るなんて!あれ?なんだか泣けてきた。よーし!モリモリ食べるぞーー!!
「涼真!一緒にごはん食べれないごめん!」
僕の席の近くに来ようとしてた涼真にそう言うとお弁当を持って急いで姫宮さんを追いかけた。すると、姫宮さんは空き教室に入っていった。
「いつもここで食べてるんだね!!」
「うるさいところが苦手なので。」
「じゃあ僕を連れてきてよかったの?」
「た、ただの気まぐれです。」
「でも嬉しいよ!姫宮さんと一緒にお昼ごはんを食べれるなんて!!」
「くだらないこと言ってないで早く食べなさい。」
そう言うと姫宮さんは僕から顔を背けてしまった。僕はそんな姫宮さんの横顔を見ながらごはんを食べた。姫宮さんの美しい横顔はごはんが進みます!ごちそうさまでした!!
あれ?これもしかして一緒に帰れるパティーンじゃないかこれ?昨日の今日で危ないからね!うん!そうだそうだ!!僕は護衛だ!姫宮さんと一緒に帰る義務がある!!よし!絶対一緒に帰ってやるぞー!!
そんなことを考えていたら、もう放課後になっていた。帰ろうとしていた姫宮さんを呼び止める。
「姫宮さん!一緒に帰らない?昨日の今日で危ないしさ!!」
「そうですね、よろしくお願いします。」
え?めちゃくちゃあっさり。でもやったーー!!姫宮さんと一緒に帰るぞーー!!今までは偶然を装って合流してもすぐに拒否されてたからなぁ〜。いや〜感慨深いものがありますね。嬉しすぎる!!
なんて喜びまくってた僕がバカだった。よく考えればあんなにあっさりことが進むわけないじゃないか!!
一緒に帰ろうとすると、姫宮さんに
「私の後ろ3メートル空けてついてきてください。それ以上近寄らないでくださいね。」と言われてしまったのだ。
くそーー!!惜しいぜ!!まあ、進歩したからよしとしましょうや!!
一緒に帰ってることには変わりないんだし!!そう考えると楽しくなってきたな!!
結構歩いたあと、姫宮さんが振り向き、こちらに近づいてきた。
「もうこの辺で大丈夫です。私の家はもう近いので。」
「そっか!!今日は姫宮さんとたくさん一緒にいれて楽しかったよ!!じゃあまた明日ね!!」
そう言って僕は振り返り、帰ろうとすると、姫宮さんが僕の袖を掴んできた。
「えっ?」
僕が姫宮さんのほうを見ると、姫宮さんは俯いたまま僕の袖を掴んでいた。
「ど、どうしたの?姫宮さん」
いきなりの夢すぎるラブコメ急展開にドキマギしてしまう僕。落ち着け貴志。ステイクールだ。姫宮さんの言葉を待て。
沈黙が続き、僕が話そうとした瞬間、姫宮さんがついに口を開いた。
「私はあなたに2度も助けてもらいました。1度目は傘。2度目は昨日不良たちから守ってくれた。私にはあなたに大きな借りがあります。私はどうしたらこの借りを返すことができますか?私にできることならなんでもします。」
「な、ななな、なんでも??」
え?なにこのスーパーラブコメ展開?夢にまで見たような展開だ!!「なんでもします」発言なんて一生に一度でいいから言われたかった僕の夢だよ!!
嬉しすぎる!!どうしようどうしよう!!待て落ち着け。
ここで気持ちの悪いお願いをすれば、ここまで頑張ってきたものが全て塵に変わるぞ!ここは紳士に対応すべし!!さっきの反応でもう少しだけ気持ち悪がられてるのは忘れよう。
「いや、借りなんてそんな風に考えなくていいよ!僕が好きでやったことなんだしさ!」
「いえ、それでは私が嫌なのです。あと、あなたに借りを作っているこの状況が不快です。」
Oh。紳士作戦は失敗したようだ。ここはもう何かお願いするとしよう!何にしようかな。ここでまた猛アピールするには、そうだ!!思いついたぞ!
「じゃあ、僕とデートしてくれないかな?」
「そんなことでいいのですか?」
「そんなこととはなんだ!姫宮さんとデートなんてそんな夢みたいなことないよ!!」
「あなたみたいな人はもっと気持ち悪い要求をしてくるかと思ってました。先ほども気持ちの悪い下衆な顔をしてましたし。」
うわ〜!やっぱりバレてた〜!でも男の子なら仕方ないよね?みんなそうだよね?なんでもって言われたらエッチなこと考えちゃうよね?僕だけじゃないよね?そうだよね?
「と、とりあえずデートで決定だから!!また詳しい日程は連絡するから!あっ、連絡先持ってないや。」
「はぁ。まあ、もう今さらですし、あなたとなら交換してもいいですよ。」
「えっ?やったーーーー!!!!姫宮さんの連絡先だーーー!!」
「ちょっと!!黙りなさい!!いきなり大声を出さないでください!!バカなんですか!!」
こうして僕は姫宮さんとLINEを交換することに成功したのだった。
「他の人に広めたりしたら、社会的に殺しますよ。」
「他の人に教えるわけないよ!姫宮さんの連絡先は僕だけのものだ!!ガルルルル!!」
「そ、そうですか。」
僕が独占宣言からの周りへの威嚇をすると、姫宮さんはちょっと引いていた。
調子に乗ったか。
「じゃあ、また連絡するから!今度こそまた明日!バイバイ!!」
「必要以上に連絡しないでくださいね。無視しますから。それと、ま、また明日。」
少し照れながら今日も「また明日」って姫宮さんが言ってくれた!!さらに今日は手を少し振ってた!!いやっふぅ!!これは絶対に距離が縮まってきてるぞ!!
ちょっとは信頼されはじめてるのかな?連絡先も交換してくれたし!!
この調子でがんばるぞ〜!!おーーーーー!!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今日、彼と過ごして改めて分かったことがあります。
彼は本当のバカです。
顔を見ていたら考えてることが丸わかりですし、いつも私のことを考えているバカです。本当なバカです。バカすぎます。
でもなぜか彼だけは嫌悪感がなくなってきました。
借りを返すためにデートする約束や連絡先を交換したりしましたが、不思議と嫌な気持ちにはなりませんでした。
「また明日」もやっぱり恥ずかしかったですが、言えました。
これは彼を信頼し始めているということなのでしょうか?
まだ私が彼をどう思っているのかわかりません。
だからとりあえずはこれからも彼をあまり拒絶することなく、一緒にいるとしましょう。
彼がどういう人間で、私が彼のことをどう思っているのか知るために。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます