第11話 姫宮とデート!4

 映画を見終わったあと、僕と姫宮さんは、ケーキが美味しいと噂のオシャレなカフェに来ていた。もちろん、昨日めちゃくちゃ調べた時に見つけた場所である。


「王道にショートケーキも美味しそうですし、チョコレートケーキも捨てがたいですし、モンブランもいいですね。どうしましょう。」


 デジャブすぎる。再放送かと思った。姫宮さんは、メニューを見ながらまた悩んでいる。


「姫宮さん、また僕のも頼んでいいよ!」


 イタリアンの時と同じく僕がそう言うと、姫宮さんはジト目でこちらを見てきた!なんてこった!ジト目もかわいい!


「あなた、また間接キスを狙ってるんじゃないでしょうね?」


「いやいや!狙ってないよ!僕が食べた反対のほうから食べたら大丈夫だよ!だから、姫宮さん!安心して僕の分も頼んでよ!」


 正直、間接キスはめちゃくちゃしたいが、ここは仕方ない。合意の上でできるまで待つさ!僕はそんないい男さ!


 姫宮さんは結局シンプルにショートケーキとチョコレートケーキを頼んだようだ。

 悩んだ結果、無難なチョイスをしてしまうところもかわいいなおい!


 映画の感想を話していると、ケーキが来たようだ。僕がチョコレートケーキで、姫宮さんがショートケーキである。


 パスタの時も思っけど、姫宮さんって、ほんとに美味しそうに食べるんだよなぁ〜!幸せが伝わってきてめちゃくちゃかわいいです!

 ほんとに今日だけで姫宮さんの印象がまた変わったな!元々優しくて、いい子だと思ってたけど、それがもう確信に変わったね!惚れ直しました!


 でもこれだけかわいくていい子なのに、どうして毒舌で、他人と関わろうとしないんだろう。


「ちょっと、なにぼーっとしてるんですか!早くあなたのチョコレートケーキも食べさせてください!」


「あっ、ごめんね。」


 僕がチョコレートケーキを渡そうとする直前、悪魔ようなささやきが頭に入ってきたような気がした。「ここがチャンスだ!アピールしろ!お前をもっと意識させろ!」そんな声が聞こえてきたような気がした。

 僕は渡そうとしていたお皿を引っ込める。


「え?どうしたんですか?」


「普通にお皿を渡すんじゃ面白くないね!これは仮にもデートだよね?だったらさ、あ〜んしてもいい?」


 攻めろという心の声に従い、僕は賭けに出た!

 なんてカッコいいことを言ってるが、正直、めちゃくちゃ、あ〜んをしたかったのだ!だってデートじゃん!夢じゃん!食べさせ合いっこなんて男の夢じゃん!!


「あ、あなたはなにを言ってるのですか!」


「あ〜んじゃないとあげないよ〜!はい!あ〜ん!」


 僕は手元にあるチョコレートケーキをフォークで取って、姫宮さんの口に近づける!


「どうしたの?食べたいんでしょ?ほれほれ!」


 僕はチョコレートケーキをもっと姫宮さんの口に近づける。


「くっ、あ、あなたは悪魔ですか!」


「だって今日はデートだも〜ん!デートっていうのは、イチャイチャするのもセットなの!だからさ、はい!あ〜ん!」


 姫宮さんは悔しそうな顔をして、少し考えたあと、顔を赤らめながら口を開けた。


「あ、あ〜ん。」


 その瞬間、貴志に落雷のような衝撃が走った!な、ななな、なんだこのかわいい生き物は!!目を閉じて無防備に口を開け、僕がチョコレートケーキを食べさせてくれるのを待っている姫宮さん。やばい、やばいて!!かわいすぎるて!


 僕は手を震わせながら、チョコレートケーキを姫宮さんの口に入れる。

 そして、姫宮さんはパクッと食べる。

 僕のフォークに姫宮さんの唇が触れる。


「美味しい。」


 姫宮さんは照れながらもしっかり味わえたようだ。


「もっと食べたいです!!あ〜んでもなんでもいいから、早く食べさせてください!!」


 ひ、姫宮さんがチョコレートケーキの美味しさで開き直ったーーーー!!え?え?やばいて!さっきまでの緊張が続くのはやばいて!!手汗えぐいて!!


「なにやってるんですか!早くしてください!!」


 覚悟を決める時がきたようだ。そうだ!僕はチョコレートケーキを姫宮さんの口に運ぶ機械だ!よし!僕は機械だ!機械だ!機械だーーーー!!


 あまりのかわいさと姫宮さんのご乱心に、攻めるつもりが攻められてしまった僕は、姫宮さんの口にチョコレートケーキを運ぶ機械となった。

 正直、なにも覚えていない。


 30分後、ケーキを食べて満足した顔をした姫宮さんと好きな女の子にケーキを食べさせるという役得なはずなのに、想像以上のかわいさで疲れてしまった僕がいた。


 どうしてこうなった。僕は攻めていたはずだ!どうして急に守りになり、さらにボロボロになっているのだ!!そして、どうして姫宮さんは満足そうか顔をしているのだ!!

 負けたままではいられない!貴志!また攻めるんだ!!


「姫宮さん。満足した顔してるけど、そんなに僕にあ〜んで食べさせてもらったケーキは美味しかった?」


 はっと思い出したように姫宮さんの顔が赤くなる。よしよし、効いてるぞ!僕が攻めてるんだからね!!絶対負けないんだからね!


「そ、そうですね。途中から気にならなくなってましたね。あ、あなただからかもしれません。」


「えっ?」


「い、いや、その、なんでもないです!ごちそうさまでした!!」


 姫宮さんはさらに顔を赤くしていた。

 え?これってどういうこと?僕は姫宮さんにもうあ〜んできるようになったってこと?どういうこと?やばいて!攻めようとした瞬間にこれですよ!僕が攻められてますよ!意識しまくってしまくりまくってますよ!!


 そんなこんなで、ケーキあ〜ん騒動は、僕の大敗で終わった。

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