第5話 side姫宮冷華
ある日、私が学校に行くと、下駄箱の中に1枚の紙が入っていました。
そしてそこには、
「今日、1人で帰れ。そしてこの路地に来い。もし来なかったら最近お前の周りをうろついてるあのチビをリンチする。」
という文言と地図が書かれていました。その場所は、私がいつも帰っている道のすぐそばでした。
面倒なことになりましたね。どうせこの前私に告白してきたチャラついた男が仕返しをしてくるのでしょう。
いつもの私なら無視しますが、今回はそうもいかないですね。私にいつも付き纏ってくるあの男を巻き込んでいるのですから。
本当になんなのでしょうかあの男は。毎日毎日ひどいことを言っているのにもかかわらず、それを嬉しそうに聞いてまた私に関わってくる。
そんな人は初めてでした。大体の男はみんな私がひどいことを言うともう関わってきません。そしてその噂を聞きつけた他の人たちも話しかけてはきません。
そんな中、バカみたいに毎日毎日話しかけてくるのがあの男です。
以前、あの男が傘を貸してくれた借りも返してないのに、また巻き込むわけにはいきませんね。1人で行くことにしましょう。そしてこれ以上あの男とは関わらないようにしましょう。
私に親しい人はいらない。私と関われば絶対に傷ついてしまうのだから。
放課後になると、またあの男は一緒に帰ろうなどと言ってきましたが、いつも以上に拒絶しておきました。さすがにあの男も今日はついて来ないでしょう。
指定された道に行くと、ヤンキーたちがゾロゾロと出てきました。
そしてまた私はひどい言葉を投げつけると彼らは激怒してきました。
このまま私はひどいことをされるのでしょう。これが今まで人を傷つけてきた私への報いなのでしょうか。だから私も傷つくべきなのでしょう。
私がヤンキーたちに囲まれた時、いつも聞いているあのバカのような声が聞こえてきました。
あの男はついてきていたのです!本当にどれだけバカな男なんでしょうか!
そのまま彼は私の前に立ち、
「この女は、僕の彼女だ!1ミリでも手を出すな!ぶちかますぞこの野郎!!!」
と言って、本当に私に触れさせることなく、守ってくれましたが、その代わり彼はリンチされてしまいました。
そこから彼が呼んだ警察の方たちが来て、私を襲ったヤンキーたちは捕まり、事情聴取を受けたあとは、彼が私を家まで送ることになってしまいました。
いつもとは違って彼は何も喋りませんでした。本当にこの男はなんなのでしょうか。どうして私に付き纏うのでしょうか。どうして私を助けてくれたのでしょうか。
気がつくと、どうして助けてくれたのかと彼に聞いてしまっていました。
すると彼は、私のことが好きだからといつもような明るい声で言ってきました。
そんなふざけた調子の彼に私は怒りが湧いてきた。
そんなわけがない。私は彼をひどい言葉で傷つけてきました。今まで私のことが好きだと言ってきた薄っぺらそうな男たちは私がひどい言葉を投げかけるとすぐに離れていき、陰口を言うようになりました。人間なんてみんなそんなものです。好きなんて気持ちは軽々しいものなのです。本当にどうしてこの男は、私と関わろうとするのでしょうか。
私が激怒してしまったあと、彼はいつもとは違った真面目な口調で、私の好きなところを語ってきました。嘘を言っているようには見えませんでした。
彼は他の人たちとは違うのかもしれない。私をしっかり見てくれる人なのかもしれない。彼のことだけは信じていいのかもしれない。
そう考えているうちに私の家に着いてしまっていた。あっ、まだ彼に助けてくれたお礼を言ってませんでした。
すると私は感謝の気持ちに加えて、「また明日」などと言ってしまいました!
恥ずかしくなり、私はすぐに家の中に入りました。
ど、どうして、また明日などと言ってしまったのでしょうか?こんなの友達みたいではありませんか!
でも私はまだ彼のことを認めるわけにはいけません。だって今まで私に近づいてきた人はみんな離れていったのだから。
ただ、彼は今までの人とは何か違うのかもしれません。
だから少しだけ彼に対する態度を変えてもいいかもしれません。
これから彼を見極めるためにも!
まだ認めたわけじゃないですから!
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