第3話 姫宮さんがデレたかも

「姫宮さーん!!今日も一緒に帰ろーーー!!」


「今日も、とはなんなのですか。私は一度もあなたと一緒に帰ったことなどないです。あなたが勝手についてきてるだけでは?ストーカーとして通報しますよ?」


「でもそう言いながら通報することなく一緒に帰ってくれる姫宮さんは優しいなぁ〜!!」


「ただそのあとの警察とのやり取りが面倒なだけです。蚊みたいですねあなたは。いや、もう蚊ですね。」


「わーい!今日も一緒に帰れるぞーー!!」


 放課後になり、僕はいつものように姫宮さんを誘っていた。最初のうちは本当に嫌な顔をしていたが、最近はもう諦めたような顔をしている!

 蚊って言われてるけど気にしないよ!蚊くらいしつこくうざくないと姫宮さんのそばにはいられないんだからね!!むしろ蚊なんて言われて光栄だよ!!


「僕のこと蚊みたいって言ってくれて嬉しいなぁ〜!」


 口に出ていたようだ。


「もうなんなのですか。本当に。」


 何はともあれ今日も一緒に帰ることが決定した。うきうきウォッチンで靴を履き、玄関に立つと、めちゃくちゃ雨が降っていた。

 うきうきしすぎて気付かなかった。今日は雨降る予報なんてなかったはずなのにな。

 でも僕はいつでも姫宮さんと相合傘できるように折り畳み傘をバックの中に常備しているのだ!!ふはははは!雨よ!恐れ入ったか!!

 チラッと横を見ると姫宮さんは傘を持っていないようだ。これはチャンスだ!!


「姫宮さん、傘持ってないの?実は僕、折り畳み傘持ってるから、もしよかったら入る?」


 姫宮さんは露骨に嫌な顔をした。


「あなたと一緒の傘に入るくらいなら、ここで一生雨宿りするか、走って帰って風邪をひきます。」


 まあ、そうだよね〜!予想通りだな!


「うん!そう言うと思ったよ!じゃあ、はいこれ!この傘使って!使い終わったら捨てていいから!!じゃあね!また明日〜!!」


 僕は折り畳み傘を無理矢理姫宮さんに渡してすぐに走って帰った。


 姫宮さんが唖然としてる間に傘渡せてよかった〜!勢いがないと受け取ってくれないからね!


 これで僕が風邪をひいて、お見舞いに来てくれたりなんかしたらもうラノベ展開だよな〜!!


 明日が楽しみだ!!


 なんて下心丸出しなことを考えてニヤニヤしていたら、家に帰って風呂に入りご飯を食べ終えベットに寝転んでいた。妄想恐るべし!!



次の日、僕は激怒していた。


「なんで僕は風邪をひいてないんだよーーーーーーーーーーーー!!」


 どうしてだよ!絶対風邪ひくパターンじゃん!なんで僕は風邪をひかないんだ!

 事の顛末を涼真に話すと爆笑しながら

「バカが風邪を引くわけねえだろ!」と言ってきやがった!!なんだこの野郎!!くそう!!

 僕が怒りに打ち震えていると、姫宮さんがやってきた。ああ。姫宮さんを見ると心が浄化されるなぁ。怒りなどなんて無駄な感情なのだろう。姫宮さん、ありがたや。


「姫宮さん!おはよう!!そしてありがとう!!」


「なんであなたはいきなり感謝してくるのですか?本当に理解しがたい虫ですね。理解したくはありませんが。」


「姫宮さんの存在に感謝してたんだよ〜!」


「言っている意味が全くわかりません。朝から本当になんなのですか。死なないかしら。」


 そう言いながら姫宮さんはカバンの中から昨日僕が渡した折り畳み傘を取り出した。


「この傘返します。あなたの私物を持ってるだけで不快感がすごいので。」


「ありがとう!昨日大丈夫だった?」


「そうですね。一応あなたのおかげなので感謝しておきます。ありがとうございました。」


「え?」


 ひ、姫宮さんが僕にありがとうって言ってくれた!!マジですか!ついにデレですか?幻聴じゃないよな?これはやばい!!嬉しすぎる!!やったーー!!!!


「やったーーー!!姫宮さんがちょっとデレたーーー!!」


 口に出てしまっていた。


「黙りなさいウジ虫。その口もう縫ったほうがいいかしら。」


 いつまにか、姫宮さんが針と糸を持っていた。


「ごめんなさい。調子に乗りました。」


 姫宮さんは僕をひと睨みして、僕の隣にある自分の席に座った。


 チラッとちょっとだけ姫宮さんを見てみると、少しだけ耳が赤くなっていた。


 姫宮さんはほんとにかわいいなぁ!!最高です!!本当にびしょびしょになった甲斐がありましたよ!!


 この調子でもっともっとがんばるぞー!!おーーーー!!!!

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