第11話「魔王城陥落」
「クラウドさまっ! ゼルミナは怒っております! えぇ! 怒っておりますとも!」
ねじれたヤギの角を振り上げて、魔界大元帥ゼルミナは豊満な胸を押しつぶすようにして腕組みをした。
相変わらず瞳は♡で、ステータスの好感度も文字化けしてる。
俺はわざとらしくゼルミナを無視して、その脇を通り抜けた。
「ちょっ……! あぁん♡クラウドさまぁ! 無視しないでくださいましぃ!」
「うるせぇなぁ。俺今忙しいんだよ。魔王倒しに行くんだから。なぁ」
アーシュとコルテに話を振る。
警戒していた二人は、こそこそと俺の影に隠れ、「そーだそーだ」とシュプレヒコールを上げた。
「そんなことより、もっと大事なお話がございます!」
いいのか、魔界大元帥。
魔王討伐をそんなこと呼ばわりして。
「なんだよ」
「聞きましてよ! クラウドさまがよりにもよって人間の小娘と結婚するとか! わたくしは許しません! 断固としてゆるしませんわ!」
今度はアーシュたちも、ゼルミナに賛同して「そーだそーだ」と手を振る。
ゼルミナは二人に向かってにっこりとほほ笑んで俺へ視線を移し、とろけそうになる表情を無理やり引き締めて、睨みつけた。
「あんなに激しく愛し合ったのに! クラウドさまはどう責任をとるおつもりですか?!」
「いや、俺は瓦礫をぶつけてケツを蹴っ飛ばしただけだが」
俺の言葉に、ゼルミナはじゅるりとよだれをすすって、身体をぶるるっと震わせる。
「そ……それが愛でございましょう?!」
「うっわ、きっも」
おもわず漏れた俺の感想に、ゼルミナは内股で股間を押さえ、がくがくとひざをついた。
呼吸ははぁはぁと荒く、両目はとろけている。
「クラウドさま……もっと言ってくださいまし♡」
這いずるようにしてすがるゼルミナの横っ面を蹴飛ばして、俺は身を引いた。
頬を押さえて転がったゼルミナは、「あぁんっ♡」と声を上げて、びくんびくんと体を震わす。
アーシュとコルテは「うわぁ……」とドン引きしていた。
「マジできもいなこいつ」
「うん、きもい」
「きもきものきもでしゅ」
「……でも俺はおっぱいを差別したりしない」
「え?」
驚くアーシュとコルテをしり目に、横たわるゼルミナへと近寄って、おっぱいを踏みつける。
ゼルミナは気持ちよさそうな声を上げ、赤くつややかな唇の端から、だらしなくよだれをたらした。
「おいゼルミナ」
「は……はひぃ♡」
「魔王をブッコロしたら、お前を俺の奴隷にしてやる」
「ほ……ほんとれすか? ……魔王さま以外に、こんなわたくしを奴隷にしてくださる方がいらっしゃるなんて……」
「あぁ、だからちょっと待ってろ」
奇妙な
つねられた痛みに
俺のステータスにいつの間にか「堕天使の
「ご主人さま! 魔王めの居室はこちらです! さぁまいりましょう!」
「まだご主人じゃねぇ。魔王をコロしてからだって言ってんだろ!」
ゼルミナのケツを蹴り上げる。
こいつはそれすらもご褒美として、嬉しそうに声を上げた。
#お仕置き #とは
とにかく魔王の城を知り尽くしているゼルミナの案内で、俺たちは魔王の部屋へと突入する。
部屋もでかいが魔王もでかい。
たぶんこの前倒したドラゴンよりでかい。
魔王はその力ですべてを見ていたらしく、30メートルほどの高さからゼルミナを見下ろした。
「魔界大元帥ゼルミナよ……。まさかキサマが
「クラウドさまのほうが素敵なのですから、当然ですわ」
「ふん、後悔することになるであろうぞ」
「ありえませんわ! ねぇクラウドさま♡」
二人が会話している間に、俺はつかつかと魔王の足元に近づいて、馬車くらいの大きさがある靴を両手でつかんだ。
ぐっと力を込めると、魔王の体が持ち上がる。
そのまま体をひねって地面にたたきつけると、魔王の体は床で派手にバウンドして転がった。
「ぐほあっ!」
魔王の城が揺れる。
アーシュたちは天井から落ちてくる岩を避けて、部屋の隅へと走った。
俺は無様に横たわる魔王の顔まで、ゆっくりと近づく。
なんか微妙にゆらゆらしてる魔王の耳を片手でつかんで、ぐいっと引っ張った。
「いい痛い痛い!
「おい、もうお前世界滅ぼすとかやめろ。手下にしてやるから」
「そのような
ぐいぐいと耳を引っ張る。
「いいい痛い! ちぎれるちぎれる!」
「めんどくせぇな、マジでちぎるぞ? 耳だけじゃなく、体中の色んなとこぜんぶ」
「あああやめてやめて! 言うこと聞く!
耳を離して、魔王の座っていた巨大な椅子に腰を下ろす。
魔王のステータスで身長の値を確認すると、俺はとりあえず身長のアドレスの値を60メートルから2メートルに書き換えた。
見る見るうちに、ちょっとでかい人間レベルにまで縮む魔王。
魔王の部屋に集まってきていた魔族が、魔王とともに俺に平伏する。
こうして、魔王の城は陥落した。
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