第10話「なんやかんやありまして」

 あの強烈な船酔いみたいなレベルアップ酔いはごめんなので、それからは経験値を数十万、数百万ずつ書き換えて、地道に(笑)レベルを上げた。


「†クラウド†パンチ!」


 どぉ~ん!

 てってれ~♪レベルアップ。


「うひゃー! クラウドすごぉい!」


「さすがクラウドしゃまでしゅ!」


「はっは~。お前らぁ~、たかが真・ウルトラ・ハイパワー・ダークネス・デス・ギャラクシー・ドラゴン第3形態をパンチ一発で倒したくらいで大げさだぞぅ~」


「クラウドってばすごい謙虚だよね! かぁっこいいー!」


「なんでしゅかその変な名前の生き物は。あれは変種のダークネス・ドラゴンでしゅよ。……でもそんなおちゃめなところもしゅき♡」


 昼は冒険、夜はおせっせ。

 〇んぽの先が乾く暇もない生活も10日目。

 ついに俺は999レベルに達した。

 筋力などの能力値も99999になっている。

 実はあの後冒険者クラスの値を0Aから12、つまり10進数で言うところの10から18まで上げることで、ヒヒイロカネクラスになっていたのだ。

 レベルや能力値の限界もオール9になったので、それ以上は上げていない。

 バグが怖いから。

 それでも、体感的にはゼルミナと最初に戦った時と同じくらいの強さだと思った。


「んじゃ、そろそろ魔王でも倒すか」


「おっ、ついにやるんだね!」


「クラウドしゃまならきっと大丈夫でしゅよ!」


「きっとじゃねぇ。絶対だ。コルテあとでお仕置きな」


「ごっ、ごめんなしゃいでしゅ!」


「あっあっ! いいなぁコルテ! お仕置きいいなぁ!」


 #お仕置き #とは


 それはともかく、実はこのあいだ国王に会って魔王のことを話した。

 図面を見せてもらった魔王の城は、巨大なダムのような構造で、内部は狭い通路が多く、国王軍が数で何とかすることもできない作りになっていた。

 そこで今まで自称勇者のパーティを何度も送り込んだが、(途中で逃げたやつも含め)帰ってきたものはいないという。


「特に魔界大元帥を名乗るゼルミナと言う堕天使には、何度も煮え湯を飲まされておる」


「あぁゼルミナならこの前倒したよ。逃げられたけど」


「なんと! それが誠であれば心強い。勇者クラウドよ、魔王を倒せば褒美は望むままに与えよう。どうか世界を救ってくれぬか」


「いいけど……今なんでもって言ったよね?」


「王に二言はない」


 カリスマほぼマックスの俺に、王は絶大な信頼を置いている。

 今だって普通なら直接会話なんかできないらしいんだが、俺は特別と言うことだった。


「だいたいパターンとして姫を嫁にって言うだろ、こういう時」


「おお、クラウドが余の後継ぎとなってくれるのであれば、こんなに嬉しいことはない。これ、だれぞエリザベサエを呼べ」


 国王の末娘、4人の姉妹のうち、唯一まだ嫁に出していないエリザベサエ姫は、まだ12歳だった。

 犯罪!

 そしてコルテとロリキャラかぶり!

 さらにアーシュとつるペタキャラかぶり!

 だがかわいい。

 日本人好みの顔で、確実に美人さんに育つだろう。

 俺はとりあえず好感度のアドレスを息をするようにさらっと「FFFF」に書き換えた。


「あっ?! 勇者さま……お慕い申しております♡」


 初対面の挨拶でコクられた(笑)

 王もまんざらでもない。

 一応今は婚約って話にして、俺たちはいろんな情報をもらって城を後にしたわけだ。

 姫の熱い視線を背中に受けながら。


 そして今、俺たちはもうすでに魔王の城の目の前にいた(唐突)


「さーて、さっさとかたづけるか」


「クラウドしゃま、そんなに急ぐのはあの姫のためでしゅか?」


「ん?」


「あ、そうそう。クラウドってば、あんな小娘と結婚しちゃうの?」


 珍しく、二人は焼きもちを焼いているらしい。

 普段は俺の言葉を100%受け入れる二人の、そんな姿もまた可愛かった。


「まぁ俺は? ロリコンくそ野郎じゃないから? 結婚するとしても? まだ先の話だけどね?」


「そっかー、さすがクラウド! ちゃんと考えてるんだね!」


「なんで全部疑問形なんでしゅか……」


「安心しろ。つるペタエルフもロリ巨乳ドワーフも、俺はみんな平等に愛してるから! 全員まとめてやりまくろうな!」


「わーい! やったぁー!」


「普通に鬼畜発言なんでしゅが……。でもそんなとこもしゅき♡」


 軽く世間話をしながら、俺たちは巨大な魔王の城へと歩く。

 その先をさえぎるように、大きな漆黒の翼が舞い降りた。

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