第09話「続・最強†クラウド†~そして伝説へ……」

 冒険者ギルドでは、お約束どおりになんかマジックアイテムで能力を計られ、受付嬢に驚かれた。

 真面目か!


「こ……これは?! プラチナクラス……いえ、伝説のタマハガネクラスか……むしろダマスカスクラス?!」


「なんだよ、ミスリルとかアダマンタイトじゃねぇのか」


「何を言うんですか。ダマスカスクラスだって、伝説の勇者さま以外に認定された冒険者はいないんですよ?!」


「やっぱあるのか、アダマンタイトクラス。っていうか俺勇者だもん、そうなるのは当たり前だろ」


 受付だけでなく、周囲の冒険者からも、さらにはアーシュとコルテからも驚きの声が上がった。


「勇者ですか……?! でも確かに勇者さまであれば、ダマスカスクラスでもうなずけます」


「クラウドって勇者だったの?! すごい!」


「やっぱり! あの魔界大元帥とかいうイカれた女の言ってたことはほんとだったんでしゅね!」


 コルテは腰に、アーシュは首にだきつく。

 その感触に、昨日の夜のことを思い出した俺は、「今夜もレッツパーリィだぜ!」と決意を新たに、デレデレと鼻の下を伸ばした。

 だがこういう時には、やっぱり反発するやつもいる。


「はっ! 自称勇者なんかいくらでも居るじゃねぇか!」


 突然、わかりやすいザコが難癖をつける。

 俺は振り返り、筋肉ザコダルマのステータスを確認して、思わず鼻で笑った。


「てめぇこの! 笑いやがったな?!」


「あ~傷ついた~? ごぉめんな~」


 全身全霊でかわいそうなものを見る目をして、俺は謝る。

 頭に血が上ったザコくんは、無謀にもギルドの中で戦斧バトルアックスを構えた。


「てめぇ! 死んで後悔す――」


 すっこぉ~ん、といい音がして、ザコが白目をむく。

 ポケットから取り出して親指ではじいた小金貨が、眉間に命中したのだ。

 ザコはそのままあおむけに倒れ、押さえ込もうと身構えていた警備員たちは驚いて俺を見た。


「うわ~ザコい。やっべぇ、まさか金貨ぶつけられただけで死んだりしねぇよな?」


「死んで当然だよこんなやつ」


「クラウドしゃまにたてつくなんて、万死に値するでしゅ」


 アーシュとコルテに蹴飛ばされながら、名も知らぬザコは運び出される。

 さらばザコ。

 キミのことは忘れない。うそ、もう忘れた。


 とにかくダマスカスクラスの認定を受けた俺は、その瞬間のフラグ制御を見逃さなかった。

 「天弓の主人」とか「腰振り猿」とか「勇者」とか「鬼畜」とかいろんなフラグが立った時の変更アドレスと、今回の変更アドレス。それに加えて俺のステータスが固まっているアドレスを比較すればだいたいの予想はついた。

 ただ、最初に女神が言っていたとおり、最悪世界が滅亡と言うかバグる可能性もあるので、俺自身のステータスをいじるのはちょっと慎重になる。

 他人がバグっても元の値で上書きすればいいけど、俺がバグったら直せないからな。

 それでも、いつまでも弱いままうろうろしてるつもりもないので、今回は賭けに出た。


「どうしまちた? クラウドしゃま?」


 コルテが今にも回復魔法をかけそうな勢いで見上げる。

 上から見ると、マジでおっぱいに顔が載ってるようにしか見えないのがすごい。

 俺はコルテの頭をなでて笑った。


「なんでもない。今からちょっとアダマンタイトクラスになるからよ」


「え?」


「アダマンタイトクラス?」


「そう。いくらまわりと比べて強くても、俺ってシステム的にマックスじゃないと気分悪いから」


「しかし勇者クラウドさま。ミスリルやアダマンタイトクラスになるには、賢者の試練をクリアしないといけないそうですよ」


 受付がうまいこと説明的なセリフを言ってくれる。

 何気なく見た好感度は、特に書き換えてもいないのに140まで上がっていた。

 たぶんレベルが上がって素のカリスマが999になったからだな。

 だが俺はその程度で満足しない。

 向上心の塊、意識他界系。

 結果にコミットするバイナリエディットだ。


「まぁフラグ立てるだけならすぐだ」


「フラグ?」


 説明は面倒なことになりそうなのでしない。

 とりあえず、ダマスカスクラスになったとき、00から08に変わった場所が怪しい。

 冒険者クラスなし→ブロンズ→アイアン→メタル→シルバー→ゴールド→プラチナ→タマハガネ→ダマスカスで8だろう。

 そこをミスリル→アダマンタイトで0Aにしてみる。

 ステータスを見ると、冒険者クラスには無事「アダマンタイトクラス」と表示されていた。

 前回一気にレベルアップしたときのような反動を覚悟していたが、今回はほとんど何もなかった。


「なった」


「え? 『なった』って何?」


「アダマンタイトクラスになった」


「えぇ?」


 驚くアーシュ。そしてコルテとその他大勢。

 俺はもう一度自分のステータスを確認し、レベルの表示が99/299になってるのを見て、軽くガッツポーズをかました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る