第02話「好感度がアップ!もう我慢できない!」
質素な布の服を着ている俺を始めは胡散臭そうに見ていた宿のオヤジも、金貨を見せると手のひらを返した。
「それでは、宿帳にご記入を」
名前か。
周囲の人たちのステータスを眺めると、どれも外国人の名前っぽい。
ここで「松下 悟」とか書いても浮いちゃうだろうな~と思ったので、いつもゲームに使ってる名前を書くことにした。
「え~っと、†クラウド†さまですか? あの、このお名前の前後にある模様は……?」
「それはダガー……いや気にすんな、様式美だ」
「はぁ、……あ、ところでお食事はいかがいたしましょう?」
「う~ん、その辺ぶらぶらするから外で食うよ」
とりあえず前金で金貨を10枚ほど渡して、外へ出る。
宿のオヤジは「街の西側は治安が悪いのでお近づきになりませんように」などと、フラグを立てるようなことを言っていた。
しかし、思ったより平和そうな街だ。
俺が救わなくちゃいけないような異世界には見えない。
ぶらぶらしていると、冒険者ギルドと書いてある建物を見つけた。
「これが有名な冒険者ギルドか~。登録しなきゃだな~」
でもまずは能力値をチートしてからだな。と、今は外観を眺めるだけにする。
「ぷっ、キミが冒険者だって?」
ふりかえると、そこではエルフの少女が笑っていた。
近くで見るとエルフめっちゃ細い。
身長はたぶん俺とそう変わらないくらいあるのに、体重は半分くらいしかなさそうに見えた。
おっぱいもぺったんこだし。
「キミ、いまものすごく失礼なことを考えてないか?」
「いや、そんなことないよ」
どっちかっていうと貧乳は好きだしね! とは口にせず、ステータスを見る。
レベルのところには63/99とある。
職業はアーチャー。
冒険者の平均レベルは知らないけど、俺と比べたら超つよい。
しかし、俺の目は別のステータスに止まった。
俺に対する好感度、18。
さっき宿のオヤジの好感度をチェックしていたが、金貨を見せる前が2、金貨を見せた後が14。さらに前金で金貨10枚渡した後が36だった。
そこから考えると、この18と言う数値は初対面とは思えないくらい高い。
俺はさっそくバイナリサーチをかけた。
当然まだ絞り込めないが、数値を変動させるため、会話を続ける。
「ども、俺クラウド」
「あぁ、ぼくはアルセイル・ミュリーシュア。人間には発音しにくいだろうからアーシュでいいよ」
このつるぺたエルフ、ぼくっ娘か。
なかなか属性盛ってきたな。
嫌いじゃないぞ。
「おっけーアーシュ。それより、俺が冒険者ってそんなに変か?」
「そりゃそうだよ。見た感じ軽い剣ですら持てそうもないし、スペルキャスターって顔でもないしさ」
「え~? 魔法って顔で使うもん?」
「あははっ、それはちがうね。ごめんごめん。そっか、スペルキャスターなんだ」
「いやちがうけど」
「ぷはっ! クラウド、キミおもしろいね!」
好感度が21になった。すかさずサーチ。
これを数回繰り返し、完璧に絞り込んだ好感度のアドレスを「FFFF」に書き換えた。
顔を上げ、アーシュのステータスを見る。
好感度の値は……文字化けしていた。
やばい、MAX超えてた。255あたりが最大値だったか。
元に戻そうとバイナリエディタを開こうとした俺に、突然アーシュが飛びついた。
「はぁ……はぁ……ご、ごめんクラウド……ぼく……ぼく、なんかもう我慢できなくて」
瞳の形が完全に♡になっていた。
好かれるのはいいが、さすがにこれでは身動きが取れない。
63レベルアーチャーであるアーシュの筋力は427で、1レベル勇者の俺は7。
柔らかくてすべすべした完璧な牢獄に捕らわれて、俺は途方に暮れた。
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