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ほら、見て見て。
子供のような無邪気さで、アカリは舌をべっとむき出してみせた。見事なまでの緑色だ。
「すごいな、ベロまでメロンじゃん」
「すごいっしょ、すごいっしょ」
うれしそうな笑い方まで、昔のままだった。
お祭りなんて何年ぶりだろう。ずっと昔にも、こうやってかき氷を食べたような気がする。いや、そのはずだ。でも、よく思い出せなかった。
「ほら、食べる?」
アカリが、ちょっとだけ氷の乗った、ストローのスプーンを差し出してきた。
俺はうろたえたのを悟られないように、できるだけ平穏なふりをして言った。
「いいよ、お前食べろよ」
「えー、おいしいのに」
アカリはそう言いながらも、緑色の氷の塊を次々と口に運んだ。お気に入りの「色つきリップ」が落ちないように、気を遣いながら。
アカリのピンク色の唇が、満足そうにつやめいているのを見て、俺は、俺たちは、時間だけが過ぎてしまったのだなと感じていた。
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