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 ばん。

 番傘様の赤い傘が、音を立てて開いた。古風さながらの本物ではなかった。似せて作った、今どきの機械式。


「どうだ、なかなかしゃれてるだろう」

 赤いセーター、赤いハイヒール、赤い番傘。

 彼女の魅力はその程度で失われるようなことはなかったが、青いジーンズではまるきり台無しだった。


「まっ。分かってないやつ、そこがよいというのに」

 彼女は不満げにつぶやき、ひとしきり、そっぽ向く。

 番傘を肩にかけ、くるりとひとまわり。


「雨の日っていいよな。ファッションに幅が出る」


 そうだろうか。僕は全く共感できない。

 でも、彼女が言うならきっとそうなのだろう。

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