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「あのさあ、待ってたんだけど」
はいはい、仰せのままに。俺は家に帰り着くなり、急いで食事の準備をしなければならなかった。怒らせると怖いのだ。彼女は。
「ばか、遅い。もっと早く帰れ。毎日だ。私のためだぞ」
次々と重ねられる不満の声を、俺はとりあえず脇に置いておく。
「おい、聞いてるのか? 聞こえないのか? 聞こえないフリか? 私にそんなことしていいのか?」
苦情が聞き流されているのに気付いたのか、俺の足にすがりついてきた。そんなふうにうろちょろされると、動きづらい。
「いいのか? またアレをやるぞ。いいんだな?」
「ああ、こら、駄目だって言っただろ」
俺は新品のソファの上に自分の毛をこすりつけようとする彼女をひょいと降ろした。
すぐにできるよ、待っててくれよ。
俺が言うと、彼女は待ち遠しいように「なーぉ」と一つだけ鳴いた。
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