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「ヘヘッ、どうすか隊長。似合ってます?」


 その女は部屋に飛び込むなり、自分の着ているドレスを見せつけるようにくるりと回った。隊員の誰かが、それを見るなりヒューヒューとはやしたてた。

 白く、大きなドレス。胸元の開いた、上流のご婦人だけが着ることを許されているようなやつだ。

 警備隊の詰め所に、お貴族様が一体何の用だ。

 本気でそう思ってしまった。俺は、まるきりアホ面をさらしていたのだろう。


「隊長? 聞いてるんですけど」

「あ、ああ、似合ってるよ」


 本心だった。

 まさかそれが、あの跳ねっ返りのエルザだとは思わなかった。どこからどう見てもいいとこの令嬢だ。

 正直なところ、見とれちまっていたわけだ。俺は。


「あ、ちょっと、どこ行くんですか」

「タバコだよ。服に臭いが付いたらマズいだろが」


 俺は適当に理由を付けて、部屋を出た。我ながら動揺している。エルザめ、うまく化けやがる。少し悔しかった。

 あいつが姫の代役など、うまくいくだろうかと思っていた。今やその不安は、少しばかり薄らいでいた。

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