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雨。
先輩は、ずぶぬれになった制服のスカートの端っこを持ち、腰のあたりで優しく絞り上げた。
「全く、ついてないな」
「そうですね」
僕と先輩は、校舎に併設された自転車置き場の屋根の下から空を見上げた。先ほどまでかすかにもそんなそぶりを見せなかった空は、今やすっかり黒々とした雲を、見渡すかぎりに広げていた。
「しばらく、足止めですね」
校舎はすぐそこではあったが、雨あしが強い。この中を渡るのは得策ではないだろうと思った。
返事がないので、先輩の方を見た。
先輩は、制服の上着を脱ぎ、白いシャツの脇腹を絞っていた。シャツの下の下着が結構はっきりと透けて見えているのに気付いて、僕はあわてて目をそむけた。
「こら、あんまり見るんじゃない」
僕の様子に気付いた先輩が、叱るような声で言う。
僕は、雨にぬれたスマホを取り出し、それから、用事もないのに、メールのチェックと、新しいニュースのチェックと、それから、天気予報のアプリを開いて、スミからスミまで見た。
時間が長く感じた。
後ろから声がした。
「……あんまり見るなとは言ったが、絶対に見るなというわけじゃないんだが」
「いや、さすがにそれは失礼だと思いまして。セクハラかと」
「意気地がないな、イマドキの若者は」
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