不幸に愛された哀しき美少年と、彼を愛した優しい青年の、壮絶な運命の軌跡

「BL」と現代風に呼ぶのではなく、敢えて「少年愛」と称したい、繊細に綴られた哀しくも美しい物語です。

「不幸な境遇の美少年」と「貴族の妾腹の青年」という組み合わせだけでごはん何杯でもいけるという人、結構いるんじゃないでしょうか。
そんな二人の物語が、19世紀フランスの空気を肌で感じるような詩的な情景描写とともに展開されていくのですから、惹き込まれないはずがありません。

主人公・ジュールは、とにかく不遇です。
酷い目に遭い、逃げ延びた先で得た安息と愛も、また乱暴に剥ぎ取られる。それを何度も繰り返します。
この、幸と不幸の配分と、それが不自然にならない展開や心理描写が非常に巧みです。
「君がッ! 幸せになるまでッ! 読むのをやめないッ!」と私の中のジョナサンが叫んだほどです。

ジュールを救った青年・ヤンもまた、心に深い傷を持つ人でした。
二人の心が近づき、引き裂かれ、再び相見えたと思ったらすれ違う——変化していく関係性の描き方が本当に丁寧で、思わず唸りました。凄い。

過酷な運命を辿った恋でしたが、二人の行き着いた答えには、温かな涙が零れました。
自分を真に幸せにできるのは、突き詰めれば自分自身に他ならないのかもしれません。
これまでの何もかもが、この素晴らしいラストシーンに繋がっていたのだと、胸が熱くなりました。

じっくりと読み込むべき作品です。素敵な物語を、ありがとうございました。

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