宇宙を彷徨う不思議な天体、なんか透明なすごい何かがなんかすごいことになるお話。
説明できません。壮大なスケールのSF、といえばきっとそうなのですけれど、それ以上のものというかもっと大きくて単純な何かのような、とにかくなんだかものすごいものを見ました。すごい。ヤバイ。宇宙ヤバイ。
宇宙に関する逸話を見聞きするとき、そのあまりの規模の桁違いさ加減に頭がぽかーんとしてしまうことがあるじゃないですか。それです。「そういう作品」ではなく、〝それ〟をそのまま文字で持ってきている、この作品はそういうお話です。文章は読みやすく、書かれている内容も理解できないほど難解なところはないのに、でも脳裏に再生される物語があっさり認識の上限をぶっちぎってしまう。書かれていること自体は理解できているのに、でも理解不能の存在と相対させられてしまう。この感覚。宇宙に想いを馳せたときの足元がソワソワする感じ、〝それ〟をそのまま文字列の中の物語性で構築してしまう。
大変なものを見ました。「読んだ」というよりは「体感した」という感じで、もう皮膚感覚のレベルで面白いです。終盤の展開にはもうどうにも言いようのないカタルシスがありました。こればっかりは正直まったく説明できる気がしないので、是非とも実際に読んでみてください。
超高粘度の流体、ガラス的なもの? を最初に思い浮かべた。
惑星=彷徨うものというのは、Planetの語源がPlanetes(ΠΛΑΝΗΤΕΣ)に由来するということをアニメで知った者だが、それをそのまま惑星そのものの生態に置き換えた視点が面白い、宇宙SFもの。ロバート.J.ソウヤーのスタープレックスなんかを少し彷彿とさせる。
この話における惑星型生物は、明らかにその第4惑星に生まれた知的生命体のような知性を持ち合わせていないものの、彼が捕食行動に至った時点でウン十億が死滅するというスケールの大きな不条理が描かれていて、なかなかにわくわくする。母性を脱出した20万の命運やいかに。
行く当てのない宇宙船と、公転軌道を外れた第4惑星だったものたちの行く末が重なるラストが印象的。