K先生
月浦影ノ介
K先生
さて、『赤い傘の女』と『ついてくる女』で、自身の体験談を提供してくれた、いわゆる「視える体質」のユミさんだが、彼女の高校時代の恩師にK先生という人がいたという。当時、三十歳ぐらいの男性教師で、ユミさんが所属していた演劇部の顧問をしていたそうだ。
そのK先生にまつわる怪異体験を二つ、ユミさんからメールで送って頂いたので、今回はそれをご紹介したい。
一、『講堂の怪』
これは、私が高校二年生のときの体験談です。
確か七月の始め頃だったと思います。
私は高校一年生から二年生に上がるタイミングで転校して来たんですが、だんだん学校生活に慣れて、部活にも所属するようになりました。
部活は演劇部です。前の学校でもそうでした。中学時代はバレー部に所属していたんですが、高校ではまったく別の事をやってみたいと思ったんです。
母がお芝居好きで、ときどき一緒に観に行くこともあったので、その影響だったのかも知れません。
演劇部は学校の西側にある講堂を主に使っていました。とても古い建物で、なんでも戦前からあるそうです。
校舎の方は戦後になってから取り壊され、新しい校舎に建て替えられていましたが、なぜか講堂は昔のままでした。
赤茶けたレンガ造りの、屋根に尖塔のある教会みたいな建物で、厳かな雰囲気が歴史を感じさせます。でもその代わり、どこか全体に陰鬱な気配が漂っていました。
その日は朝から曇りがちの天気で、午後の授業が終わる頃にはとうとう雨が降り出して来ました。
私たち演劇部員は講堂に集まって、舞台下で発声練習などをしていました。
その当時、顧問として私たちを指導していたのが、数学担当のK先生でした。短めの髪をオールバックにして、黒縁の眼鏡を掛けた、三十歳前後の中肉中背の男性教師です。
滅多に笑顔を見せることがなく、近寄り難いというか少し取っつきにくい感じで、生徒たちからは「鉄仮面」って渾名されていました。
でも誰に対しても公平で、叱るときも決して声を荒げたりしないし、部活にも毎日顔を出して熱心に指導してくれるので、実は信頼している生徒も多い、そんな先生でした。
そのK先生が見守るなか、一通り発声練習などを終え、舞台上で通し稽古をしていたときです。
舞台の隅においてあるグランドピアノが突然、ボーンと鳴ったんです。
その場にいた全員が固まりました。だってピアノの前には誰一人いないどころか、鍵盤の蓋は閉められていて、どうやったって鳴らせるはずがないのです。
「やだ、また • • • • • 」と誰かが呟いたのが聞こえました。
実はこの古い講堂は「幽霊が出る」と、もっぱらの噂がある建物でした。
誰もいないのにピアノが鳴ったのも一度や二度ではありません。舞台上に黒い人影を見たとか、誰かに足を掴まれて転んだ、後ろで声がしたので振り向いたが誰もいない、なんて怪談めいた話がまことしやかに語られていたのです。
私自身、演劇部に入ってから、この講堂で怪しい人影を何度か見掛けたことがありました。
それは他の部員たちも同じで、なかにはそれを怖がって部を辞めてしまう子もいたぐらいです。
演劇部で仲良くなった子から教えて貰ったんですが、この講堂は戦時中、空襲で亡くなった人たちを一時的に収容するための死体置き場として利用されていたそうです。
だから講堂で起きる数々の怪現象も、その事と結び付けて考える人が多く、私もその一人でした。
講堂がいつまでも建て直されないのも、取り壊そうとすると学校関係者に事故が相次ぐからだ、なんて噂もあったぐらいです。
誰も声すら発せず黙っていると、窓を打つ雨音が一段と激しくなりました。風の唸りが講堂内に響き、遠くで雷鳴が聞こえます。
重苦しい沈黙が辺りを包んだとき、「天気も荒れて来たし、今日はこれで終わりにしよう」というK先生の声がそれを破りました。
私たちは金縛りから解かれたように思わずホッとして、舞台を降りたそのときです。
いきなり何の前触れもなく電気が消え、目の前が暗転しました。そして次の瞬間、窓の外が目も眩むばかりに光ったかと思うと、ものすごい轟音が私たちの耳を打ち、講堂の壁や床を震わせたのです。
「───雷で停電した!」
誰かの悲鳴のような声が聞こえました。
私は思わず「違う!」と叫びそうになりましたが、喉が掠れて声になりませんでした。
間違いなく落雷の前に停電したはずです。普通、そんなことがあり得るでしょうか?
そして私の言いたかった「違う」の言葉には、もう一つ別の意味がありました。
私は、見てしまったのです。
停電した直後、落雷で講堂内が一瞬白く照らされたそのとき、K先生と部員全員の背後に、「人の形をした黒い影のような何か」が立っていることを • • • • • 。
「あぁ • • • • • 」
私は悲鳴にもならないような小さな声を漏らして、その場にへたり込んでいました。
他の子達は一箇所にかたまり、K先生に早く電気を付けてと騒いでいます。
やがて電気が点いて講堂内がパッと明るくなると、部員たちは我先にと荷物を抱え、建物の横にある出入り口へと駆け出しました。
K先生はへたり込んでいる私に「大丈夫か?」と声を掛けると、手を引っ張って立たせてくれました。
「先生、さっき皆の後ろに・・・・・」
「良いから早く来い!」
先ほど見たものを話そうとする私を遮って、先生は講堂を出るよう促します。
震える足でなんとか必死に走り、渡り廊下に出たところで、K先生が講堂の扉を閉めました。
空は黒い雲が低く垂れ込め、雨は一層激しさを増して降っていました。ときおり雲間を稲光が走って、雷鳴が窓を震わせます。
部員たちは皆「さっきは怖かったね」などと騒いでいましたが、校舎に戻ってだいぶ落ち着いたようです。
しかしそれとは対照的に、K先生はひどく青ざめ緊張した面持ちでいました。
その様子から、私はK先生もあの黒い人影を見たのではないかと思いました。
雨はいよいよ激しくなり、天気予報を見てもしばらくは止まないようです。
この雷雨の中、生徒たちを一人で帰すのは危険と判断したK先生は、それぞれ親御さんに迎えに来て貰うよう電話を掛け、迎えが来られない子は、先生が車で直接送ってくれることになりました。
私の家は母子家庭で、母は昼間は働きに出ています。
K先生に送って貰えるのは、私を含めて三人。他の二人を自宅前まで送り届け、最後は私だけになりました。
顔色は元に戻ったものの、K先生はやはり堅い表情のまま黙ってハンドルを握っています。
助手席に座った私は、意を決して先生に尋ねてみました。
「先生、もしかして講堂で雷が落ちたとき、何か見たんじゃありませんか?」
少しの沈黙のあと、K先生は口を開きました。
「お前はどうなんだ。何か見たのか?」
私は頷き、自分が見たものをありのままに伝えました。
「あの講堂って、戦時中は死体置き場として使われてたんですよね。以前から色々な怪現象が起きてるっていうし、やっぱり • • • • • 」
「いや、それは嘘だ」
K先生に嘘つき呼ばわりされたと思い込んだ私は、つい大きな声を出してしまいました。
「私、嘘なんか言ってません!」
「ああ、違う違う。嘘ってのはそういう意味じゃなくて • • • • • •」
先生は一つ咳払いをすると、こんな話を始めました。
「戦時中、あの講堂が死体置き場として使われたって話な。それはデマなんだ」
「デマ?」
私の問いに先生が頷きます。
「妙な噂が飛び交ってるから、自分で調べてみたんだ。当時の記録を幾つか当たってみたが、あの講堂が死体置き場として使用されたという記述は見つからなかった。市内の郷土史家にも尋ねてみたが、やはりそんな記録はないそうだ」
「じゃあ、建て直そうとして学校関係者に事故が相次いだって話は?」
「それもデマ。古いまま使っているのは、単に建て直すだけの予算がないからだ」
K先生の話に、私は言葉を失いました。それなら、あの講堂で起きる数々の怪現象は一体何が原因なのでしょう?
「あの講堂な、実は床が少し傾いてるんだ」
戸惑う私に、K先生はさらに言葉を継ぎました。
「普通に立ってるだけでは気付かない程度の、ほんの少しの傾きだ。だが人は僅か0.6度の床の傾きで、具合が悪くなったりする。1度で牽引感や浮遊感を覚え、2~3度になると吐き気を催したり食欲不振になる。最近、欠陥住宅って問題になってるだろ? 床の傾きによる健康被害ってのは、案外と馬鹿に出来ないものなんだ」
「じゃあ、あの講堂で起きる怪現象って • • • • • ?」
「おそらくそれが原因だ。僅かな床の傾斜は、人間の感覚に微妙な狂いを生じさせる。自律神経が乱れ、見えないものが見えたと思ったり、聞こえないはずのものが聞こえたと感じたり、何もないところでバランスを崩して転んだりする。あの古い講堂の陰鬱な雰囲気は怪談の舞台としてピッタリだ。以前からある噂話が拍車を掛け、幽霊が見えた、声が聞こえた、誰かに足を掴まれたという怪現象として強く印象付けられる。噂は噂を呼び、戦時中は死体置き場だったというデマ話と結び付いて、ここには未だ成仏出来ないたくさんの幽霊が彷徨っている、という怪談話が出来上がる。怪談が発生する理由ってのは、多かれ少なかれだいたいこんなもんだろう」
さすがは数学の先生、論理的で現実的です。しかし私にはどうも釈然としませんでした。それならあのとき、誰も触れていないのに強く鳴ったピアノの音はいったい何なのか。私だけでなく、部員のみんなやK先生も一緒に聞いていたはずです。
K先生は自分の見たものを否定したいがために、そう強く思い込もうとしているのではないか。私にはそう思えてなりませんでした。
「実は俺も、お前ら全員の後ろに妙な人影を見たけどな。講堂の特殊な環境や悪天候による影響が見せた幻覚みたいなもんだと思ってる。だからお前も、幽霊を見たなんてあまり騒がない方が良いぞ。気の弱い子は怖がるし、また部員が減っては困るからな」
最後は珍しく冗談めかした口調でしたが、K先生の表情はやはり堅いままです。
「あんなモノが本当にいてたまるか • • • • • 」
再び沈黙が訪れた車内に、K先生の小さな呟きが聞こえました。
母と暮らす市営の小さなアパートに到着する頃には、雨も小降りになっていました。
門のところで車を降ろして貰い、私はK先生に送って貰ったお礼を言いました。
「じゃあまた明日、学校でな」
K先生は運転席から窓を開けてそう言うと、再び車を発進させました。私はアパートの門前に立ってそれを見送ります。
そのとき、私は全身が毛がゾワリと逆立つのを感じました。
先生が運転する車の後部座席に、あの講堂で見たのと同じ黒い人影が二つ、確かに乗っていたからです。
声をかける間もなく、車は遠ざかって行きます。
翌日、K先生はいつも通りに出勤して来ましたが、前日よりも顔色が悪く、どこかやつれていました。
昨日あれから何かあったんですか、と尋ねましたが、K先生はそれについては一切何も語らず黙ったままでした。
(了)
二、『パソコン室の怪』
これもK先生に関係するお話です。
講堂での出来事から少し後、確か夏休みに入る直前だったと思います。
先にお話した通り、私は演劇部に所属していました。入ったばかりの新入部員でしたが、実は十月の文化祭で発表する舞台の脚本を、私が引き受けることになったんです。
それまで脚本を担当していた先輩が、私の入部と入れ違うように海外へ引っ越してしまって、次の舞台のアイデアを皆で出し合ったところ、私の提案した話が選ばれたんです。
実は私、子供の頃から小説や漫画が大好きで、自分でもお話を書いたりしていました。なので選ばれたことは素直に嬉しかったし、やる気もありました。
内容は学校を舞台にした、人が死なないミステリーです。
従兄から貰ったお古のワープロを学校に持ち込み、あれやこれやと物語の筋を練ったりしていました。
脚本を書くのは主に放課後。文化祭は十月ですが、練習時間を考えるとあまり時間がありません。なので脚本が完成するまで、私は部活動に参加するのを免除されていました。
その日、私はワープロを抱えてパソコン室へ向かいました。いつもは図書室を利用するのですが、その日はたまたま人が多くて、あまり集中出来そうになかったからです。
職員室で鍵を借りようとすると、すでに演劇部顧問のK先生が使用しているとのこと。
いつもは部活動に熱心なK先生ですが、授業で使うプリントの作成が間に合わず、今日は部活の指導を休んで仕事をしているのだとか。
パソコン室は廊下側の壁の上半分がガラス張りになっていて、行ってみるとK先生が難しい顔でパソコン画面を睨んでいるのが見えました。
ドアをノックして室内に入り、私はK先生に事情を説明して、パソコン室を使用する許可を取りました。
ドアを閉めようとすると「開けたままで良いぞ」と、K先生が言います。たぶん女子生徒と二人きりなので、変な誤解を招かないための配慮なのでしょう。どうせガラス張りで外から丸見えなんだから、変な気を回さなくて良いのにと思いましたが、私はK先生のそういう妙に真面目すぎるところが可笑しくなりました。
ですが、K先生から少し離れて適当な席に着いた瞬間、私は「あ、嫌だな」と感じました。
初夏の日差しがカーテン越しに射し込んで、室内はとても明るいのに、何か雰囲気が暗く重苦しいのです。
室内は冷房が効いていましたが、それとは異質な肌寒さを感じます。
───間違いなく何かがいる、と思いました。
それまでもパソコン室は授業でたびたび利用していました。しかしそんな風に感じたことは、今まで一度もありません。おそらくは大勢のクラスメイトたちが一緒なので、たくさんのお喋りや笑い声で場の空気がかき乱されていたからだと思います。
でもこのときは確実に違いました。澱んだ空気がねっとりと漂って、呼吸するのも苦しくなるぐらいです。
それが表情に出ていたのでしょうか。K先生が怪訝そうに私を見つめ「大丈夫か?」と、声を掛けて来ました。この室内の異様な気配に、先生が特に気づいている様子はありません。
私は誤魔化すように少し笑って「大丈夫です」と答え、それからワープロに向き直りました。とにかく脚本に集中して、この室内の空気は忘れようと思ったのです。
それからしばらくは何事もありませんでした。私も次第に執筆に夢中になって、室内の異様な空気など気にならなくなっていました。K先生もパソコン画面と睨めっこで、無言のままプリント作成に掛かりっきりになっています。
執筆が一段落して、ふうっと息を付いたときです。
入り口のドアの方向から、キイッ • • • • •っという微かな音が聞こえました。
その音につられて、ふと目を向けたそのとき。
半開きだったドアがゆっくりと閉じて行きます。
そのドアノブの下に、何かがいました。肩まで伸びた長い髪、紺色の襟の付いた白いセーラー服と、その胸元の赤いスカーフ。床に投げ出された白い足。だらりと垂れ下がった両の腕。そして力なくうなだれた首。
女の子でした。制服はこの高校のものです。ドアノブに結びつけられた細い紐が輪っかを作って、青白い首筋に食い込んでいました。
私は悲鳴を押し殺し、目の前の光景を信じられない思いで凝視しました。それは紛れもない首吊り死体でした。ドアノブに紐を掛けて、セーラー服の女の子が首を吊って死んでいるのです。
「 • • • • • おい、大丈夫か?」
その声に振り向くと、パソコンの前に座ったK先生が少し怪訝そうな表情でこちらを見ていました。
「なんか様子が変だぞ。顔色も悪いし」
K先生は私を心配してくれているのでした。少しホッとして「いえ、大丈夫です」と答え、私は再び入り口のドアへ目を向けました。しかし先ほどのセーラー服の首吊り死体はすで消えていました。
あれが幻覚や妄想の類でないことは、自分自身がよく分かっています。このパソコン室ではかつて人が死んでいる。私はそう確信しました。
私は「ちょっと失礼します」と言って席を立ち、パソコン室を出ました。水飲み場で顔を洗い、しばらくそこで息を整えました。
K先生には何も見えてない。だったら何も知らない方が良い。これから何が視えても気取られるような態度をとっちゃダメ。そう自分自身に言い聞かせ、再びパソコン室へ向かいました。
ガラス張りの壁の向こう、パソコン画面を覗き込むK先生の姿が見えます。
私はドアをノックして室内に入り、再びK先生を振り向いて、思わずその場に立ち尽くしました。
何故なら、K先生の背中に、さっきのセーラー服姿の女の子が覆い被さっていたからです。
半袖から伸びた白く細い腕を先生の首に艶めかしく巻き付かせ、切り揃えた前髪の下から覗く濁った目が、嫉妬とも憎悪とも付かない表情を浮かべ、私をじいっと睨み付けています。まるで「この人は渡さない」とでも言うように。
私は今度こそ悲鳴を上げ、その場にへたり込んでしまいました。
「おい、どうした?」と、私のただならぬ様子に、K先生が椅子から腰を浮かせます。
私は慌てて立ち上がると、急いで帰り支度を始めました。そして「急用を思い出したので、今日はもう帰ります」と言い訳をして、唖然とするK先生を残したまま、パソコン室を後にしました。
一端、教室に戻り、教科書などを鞄に入れて、正面玄関へ向かうと、背後から声を掛けられました。振り返るとK先生がそこに立っています。
「なあ、一つ尋ねたいんだが • • • • • 。お前、ひょっとして何か見たんじゃないのか?」
講堂での出来事もあったばかりです。自分がいわゆる「視える体質」であることは公言していませんが、K先生には何か勘付かれてしまったようでした。
「さっきパソコン室で何を見たんだ? 頼むから教えてくれないか」
K先生はいたって真面目な表情です。
「あのパソコン室は俺もどうも苦手でな。あそこに入ると妙に頭が重くなったり、首筋や肩が痛くなったりするんだ。何か見ていたなら隠さず教えてくれ」
その問いに少し躊躇ったあと、私は一言だけこう伝えました。
「先生、近いうちにお祓いに行った方が良いと思います」
K先生にそれはどういう意味かと訊かれましたが、とても正直に話す訳にはいきません。
何故ならそのとき先生の背中には、あのセーラー服の女の子がまだしっかりとしがみついていたからです。
後になって知ったのですが、かのパソコン室では十年ほど前、一人の女子生徒がドアノブに紐を掛け、首を吊って亡くなった事件があったそうです。
理由は分かりません。イジメにあっていたとも、家庭内に複雑な問題を抱えていたとも、あるいは若い男性教師に叶わない片思いをしていたからだとも言われています。
念のために断っておくと、その片思いの男性教師とはK先生じゃありませんよ。
K先生はその当時、三十歳ぐらい。十年前ならまだ学生のはずですから。
その翌日のことです。すっかり生気を失った表情のK先生が「お祓いしてくれる人を知ってるなら、紹介してくれないか」と、話し掛けて来ました。
思うに、あれから自宅へ帰ったあと、何かあったのかも知れません。先生はそれについては何も話してくれませんでしたが。
私には拝み屋さんの知り合いはいないので、母の実家が檀家になっているお寺を紹介しました。それから間もなくご祈祷を受けたそうで、ずいぶん顔色も良くなったので、たぶん効果はあったのだと思います。
その後もパソコン室ではときおり怪現象が起きたりして、生徒たちの噂になっていました。
あのときの出来事は誰にも話してませんが、私もK先生も、それ以来パソコン室を自分一人で使うことは絶対にありませんでした。
(了)
K先生 月浦影ノ介 @tukinokage
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