月浦影ノ介

明治時代、とある無名作家の元には、今日も勝手に怪談奇談が集まって来る。それらは後にまとめられ『明治月影綺談録』と名付けられた。 その知られざる逸話を、これより一つずつお届けすると…

アパートの部屋に引き籠もってしまった友人Ｋ。心配した“僕”がＫの部屋を訪ねると、そこで彼が語りだしたのは、“もう一人の自分”に関する奇妙な体験談だった。

夜中に訪ねて来た、隣室に住むという一人の男。島田と名乗るその男は「ベランダを貸してくれ」と、奇妙な頼みごとをして来た。

元禄十六年の夏、亡き父の無念を晴らすため、高村平太郎は仇敵、赤林半兵衛を捜し続けていた。しかしその行方はいまだ知れず、先の見えない孤独と貧しさのなかで、彼の心身は次第に疲弊しつつ…

小さな田舎町の北側に位置する久美木山。そこでは毎年、必ず首吊り自殺があることから「首吊り山」という不気味な名前で呼ばれていた。

警察官の野崎さんは地域住民の通報で、あるキャンパーの元を訪ねる。傍目には気楽なテント生活を続けているように見えたが、しかし彼はある事情を抱えていた・・・・。

学校とは学生たちの学び舎であると同時に、怪異の集まる場所でもある。 これは“視える人”、ユミさんから伺った、彼女の高校生時代の恩師である、K先生にまつわる話である。

今から五年前のこと、小学六年生だった僕は、校舎の屋上に奇妙な影法師を見つけた。そしてこれが、あとに続く怖ろしい体験の始まりだった・・・・。

四十年ほど前、会社員だったAさんは、大学時代の先輩から、ある女性霊能者を紹介される。

大正と現代。百年の時を越えた、ある恋《いんねん》の物語。

　これは関東某県で小料理屋を営む女性から聞いた話である。

文久二年十二月、深川で凄惨な一家惨殺事件が発生し、江戸の町はこの恐るべき殺人鬼に騒然となった。 下手人が捕らえられぬまま年は明け、文久三年一月、用心棒を稼業とする浪人、犬廻兵悟は…

モトクロスバイクで山道を走っていたIさんは、途中で放置された白い軽自動車を見つける。

怪談には文脈が必要である。だが、ここに書かれたのは、「怪談」になる前の文脈のない怪異たちの記憶だ。

成人式を翌日に控え、藤村さんは実家に帰省した。そこで彼を待っていたのは、明治時代から家に伝わる「座敷わらし」を巡るある秘密だった。

大正十一年の秋、学習院高等科の学生だった私は、半年前に失踪した叔父に会うために茨城県の大洗海岸を訪れた。 しかしそれは、あまりにも奇妙な物語への入口であった…。

筆者が知人から紹介して貰ったのは、“視える”体質のある若い女性。その口から語られたのは、彼女がまだ十代の頃の体験談であった。

終戦から数年が過ぎたある夏の昼下がり。山間の田舎町を訪れた青年は、具合が悪くなり休んでいたところを、通り掛かった親切な婦人に助けられた。そして介抱して貰ったその家で、青年が見たも…

世間では事故物件などと言われるが、そもそも人の死なない場所などない。心霊現象を信じない私は、そう考え事故物件と思われる格安の部屋に引っ越した。

東京から父の生まれ育った農村に疎開した少年、修一は、そこで一匹の野良犬と出会い「シロ」と名付ける。 そして日本の敗戦が目前に迫った、昭和二十年八月。巨大な死の影が空を覆うような黄…