小さな村の夕暮れ。 見たこと覚えのない案山子が突然一本立っていた。 伝聞という形で、郷愁と不可思議を描いた短編ホラー。・ 話に出た人物にとっては怖い体験だったろうが、何とも味わい深い作品である。 子供の頃、気の良い地元のおじちゃんが出会うたびに、わざと顔をしわくちゃにして、笑わそうとしてたっけ…… 不幸なことに人見知りだったので、あの顔にだいぶ苦手意識があったのだけれど…… 伝聞形式というのがまた、良い味を出している。 苦笑いと微笑ましさが半々ずつ混じった怪談だった。