第7話

「お風呂いただいたよー」


「お、おう」


さっきの華楓の姿が未だに脳裏に焼き付いているため、些細なことでも意識してしまう。

例えば、少し濡れて、手入れが行き届いている綺麗な茶髪。お風呂上がりからか、赤みがかった頬。雪原のように真っ白なうなじ。


華楓の全てが妖艶に見え、理性が飛びそうだった。


「じ、じゃあ俺も風呂入ってくるわ」


強引に華楓を意識の外へ追い出すために、足早に風呂場へ駆け込んだ。


ひとまず華楓との接触を断つことに成功し、気を緩めた。

服を脱いで、既に華楓の服が入った洗濯カゴに放り込む。

さて、風呂に入ろ……


ん???


華楓の服が入った洗濯カゴ???


なんてことだ。

いや、少し考えれば華楓の服があることぐらい当然だと分かったはずだ。

油断していた。


とりあえず、俺の服は回収して他のところに置いておこう。


俺の服を手に取ったそのとき、さっきは目に止まらなかったはずの、色々な意味で一番見てはいけないものを見てしまった。


とある双丘を守る黒い羽衣。

それに記された文字まで鮮明に目に飛び込んで来た。


できるだけ、それ以外の物からは目を逸らし、俺の服をほっぽり投げ、ようやく風呂に入った。


自分の煩悩を洗い流すように冷た目のシャワーを浴びる。

ここ最近暑いので気持ちが良い。


うん。気持ちが良い。


……


「六番目か……そりゃデカいわ……」


結局風呂場でも華楓を意識してしまって、悶々とシャワーを浴びた。




「上がったぞー」


俺が声をかけると、華楓はキャリーケースの中を探す手を止めて俺の方へ振り返る。


「んー、あ、優。おかえり」


「なあ、華楓。その……服は自分で管理してほしいんだが……」


「服……?あぁ!?ご、ごめんね。次から気をつけます……」


失態に気づいた華楓は顔を真っ赤に染め、髪を弄りながら恥じらっていた。

裸はいいのに服はダメなのか……

よく分からん。


「まあ、そのことはこれから注意してくれ。それより、さっきから何か探してるのか?」


「うん、そうなんだけど見つからないんだよねー。でも今必要って訳じゃないからまた後で探すよ」


「手伝ってほしい時は遠慮せず言ってくれ」


「ありがと、その時は頼らせてもらうね。あ、そうだ。さっき見つけたんだけど、アレやってみたいな」


華楓が指さす先には、家庭用ゲーム機があった。


「そうだな。久しぶりに対戦でもするか?」


「お、いいね。でも私、引っ越してからゲーム一回もしてないから私も知ってるゲームがいいな」


「んー、それならこれはどうだ?前作は一緒にやったことあるだろ?基本操作はほとんど変わってないから、多分華楓でも出来ると思うぞ」


俺が提案したのは某カーレースゲーム。

前作はよく俺の家で華楓と遊んだものだ。


「うん、それならできそう。一回だけだと短いと思うから三本勝負にしない?」


「そうだな。でも何も無いとおもしろくないから何か賭けるか?」


「なんかやけに挑戦的だね。いいよ、じゃあ負けた方が勝った方のお願いをなんでも一つ聞くってのは?」


「その辺がベタだな。よし、乗った」


「ふふっ、後悔しても知らないからね?」




小悪魔的に微笑んだ華楓に見とれたのは言うまでもない。

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