第10話

ピピピッ。ピピピッ。

枕元の目覚まし時計の音で目が覚めた。

時刻は6時。学校が無いと言えど、生活リズムは崩さないようにしている。


いつもこの時間に起きて朝食(コンビニ飯)をとり、勉強を始める。


ただ、今日はいつもと少し違った。

キッチンから甘い香りがするのだ。

眠い目を擦りながらキッチンへ向かうと、自前のエプロンを着けた華楓が朝食を用意してくれていた。


「あ、おはよう、優。本当にちゃんとこの時間に起きるんだね」


昨日、いつも起きる時刻を教えてほしいと頼まれたので、素直に伝えると華楓はかなり驚いていた。学校が休校なのに早く起きる高校生はなかなかいない、とのこと。


「おはよう、華楓。悪いな、俺に合わせてしまって」


「ううん、私がしたくてしてるんだからいーの」


「じゃあお言葉に甘えて。ところで今何を作ってるんだ?」


華楓は牛乳や砂糖、卵などを混ぜて何か作っていた。料理に疎い俺は何が出来るのか全く分からない。


「ここまで来たらあれしかないでしょ…」


「そう言われてもなぁ。分かんないから教えてくれ」


「やーだ。出来上がるまで秘密。それより、顔洗ってきなよ。それまでに完成させるから」


「変なところでケチだなぁ」


「ケチとか言わない。ほら、洗面所へ行った行ったー」


促され、渋々洗面所へ向かう。

顔を洗い、髭を剃り、ある程度寝癖を直したところで再びキッチンへ向かう。


すると、二人分の皿にとても芳ばしい香りのフレンチトーストがあるのを見つけた。


「なるほど、さっき作ってたのはフレンチトーストの素だったのか」


「そーそー。あんまり作ったことないけど、意外と上手に出来たんじゃない?」


華楓はそう言っているが、実際かなり美味しそうだ。日の光が差し、フレンチトーストを黄金に輝かせている。


「それじゃあ早速。いただきます、華楓」


「どうぞ、召し上がれ。いただきまーす」


まずは一口、何も付けずに食べる。


これは美味い。


外はカリカリ、中は甘みが染み込んでいてふわふわしている。

今まで食べたトーストの中でダントツに美味い。


次に、メープルシロップをかけて食べる。

シロップがよりフレンチトーストの甘みを引き立たせている。

一度噛む事にシロップがフレンチトーストからじゅわ〜っと口の中に広がり、とても優しい味だ。


「華楓、これめちゃくちゃ美味いな」


「そうだね。我ながらいい出来だと思うよ」


ふふん、と胸を張る華楓。

確かに、このフレンチトーストは胸を張って美味しいと言える。




「ごちそうさま、華楓。美味かった」


「いーえ、お粗末さまでした」


昨夜同様俺が一人で皿を洗っていると、横から顔を覗かせた華楓が水滴の残る皿を拭いてくれた。


「二人でやったほうが早いよね」


「ありがとう。助かる」


このなんでもない一瞬が、俺にとっては非常に心地よかった。






あとがき


更新遅れてしまって申し訳ございません。


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