第5話

思い出話をしながら俺たちはスーパーへやってきた。


「ところで、今日は何を作るんだ?」


「それは秘密。夕飯までのお楽しみだよ」


そう言って華楓は手際よく食材をカゴに入れていく。卵や肉、その他色々な野菜を買っていたので、それだけでは今日の夕飯の推測はできなかった。

ちなみに俺は何を買うのかも分からないので荷物運びに徹した。




買い物を終える頃には、予想通り荷物の量がすごいことになっていた。その量は大きめのレジ袋四つ分。

二人で来たものの、やはり華楓に持たせるわけにはいかないので、俺は四つ全てのレジ袋を手に持ち、先程来た道を戻る。


「ねえ、やっぱり私も持つよ。優だけつらい思いさせるわけにはいかないよ」


「いや、大丈夫。これには男のプライドもかかってるから」


「だーめ。私も持つ」


強引ぎみに右手に持っていたレジ袋二つを奪い取られた。


「ちょっ… おい、だから大丈夫だって」


「私がしたいんだからいいの」


華楓はなかなか頑固なので、こうなってしまうともうどうしようもできない。

大人しく荷物を持ってもらうとしよう。




「昔もこうやってよく一緒に歩いたよね」


家まであと半分ほどというところで華楓が切り出してくる。


「ああ、懐かしいな」


「あの頃は手繋いだりも普通にしてたよね」


「まあまだお互い小さかったしな」


「うん… ねぇ、もしさ」


「ん?なんだよ改まって」


「その… 私がまた手繋ぎたいかなーなんて言ったら…どうする?」


驚いて持っているビニール袋を全部落とすところだった。

足を止め、横を歩いている華楓を見ると夕日と同じくらい頬を真っ赤に染めている。

照れながらも勇気を出して言ってくれたんだな。


「もちろん繋いでやるぞ。ほれ」


「え?ほんとにいいの…?」


「ああ、むしろ断る理由が無いだろ」


「だってさっき優… さっさと両手に荷物持ってたし… 私と手繋ぐの嫌なのかなって思っちゃって…」


良かれと思った行為が華楓を不安にさせてしまったのか。


「あー、それは単純に女の子に荷物を持たせるわけにはいかないというか、見栄張りたかっただけだ。不安にさせてしまったのなら申し訳ない」


「じ、じゃあ… 手繋いでもいいの?」


「さっきからそう言ってる」


「そ、それじゃあ…繋ぐね?」


俺の指に華楓の指が絡まってくる。手の平に華楓の熱がもろに伝わる。火傷しそうなほど、それでいて優しさのこもった熱だった。


「ふふっ、久しぶりの感触だね」


「ああ。でもそれでいて大きくなったな」


「そりゃそうだよ。もう高校生だもん」


止めていた足を自然と動かす。華楓もそれについてきてくれた。


「そうだな。それよりさっき荷物持ったから手を繋ぐのが嫌なのかと思った、ってなんだよ。考えすぎだろ」


「そ、そんなことないよ… ってか恥ずかしいからやめて!」


「悪い悪い」


「もー、それ悪いと思ってないでしょ!」




二人で笑い合っていると、いつの間にか家に着いていた。






あとがき


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