本作はトゥア・ハーデ・ダナーンという架空の世界を舞台に、怪物や魔神の勢力と戦う闇祓いの少年の活躍を描いた物語です。
タイトルであるゲイザーからは、ファンタジーの世界では割りと定番な一つ目で宙に浮いた化け物が連想されますが、本作ではgaze(じっと見る)の見守るという意味合いが強いようで、光と闇の狭間で命を見守る存在となっています。
昨今のファンタジーとは少し趣が異なり、異世界転移やチートなどはなく、昔ながらのハイファンタジーの流れを汲む作品です。
また、文体は落ち着いており、各篇ともに読みやすい長さにまとめられており、すらすらと読み進めていくことが出来ると思います。
さあ、あなたもゲイザーの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
読み始めたときにまず驚愕してしまいました。
圧倒的文章力、というのはこういうことか、と。
実を言うと知らない単語が多く、調べつつ読ませていただきました。
なので、とても勉強になりました。
そして作者様はどこでボキャブラリーを身に着けられたのかと興味がわきました。
おそらく浴びるように良い作品をインプットし続けているからだと推測しています。膨大な知識量から生まれたのが本作なのだと思うと納得です。
「作品」としての完成度がずば抜けています。
グッとくるシーンもあり、遊び心を感じさせるところもあり、とても器用に表現されています。
ウルカさんにトキメキました。素敵っ!
他の方も仰られていますが、「☆10」レベルの作品だと思います。
読み応えのある作品を求めている方にオススメです!
王道ファンタジーを描く……。これがいかに困難な事であるか、経験者は骨身に染みて解っている事だろう。今回読者諸兄に紹介させて頂くのは、この難題を見事に克服した作品である。
この作品にはどぎつい暴力・残虐・性描写が見られない。独特の癖や無駄な修飾もなく、滑らかで丁寧な万人受けする文体である。
又、「!」や「――」等の約物の使い方もこなれていて、文章の流れに変化を加えている事が判るはずだ。
しかし舌(目)の肥えた読者諸兄ならば、入念な原材料の選定に似た言葉選びと、丹念な発酵過程を思わせる字配りに心底唸らされるだろう。
加えて、ドラマやアニメを彷彿とさせるエピソード分割も作品の没入度を高めるのに一役買っており、ライトな読者層にも味わって貰いたいとの作者の配慮が伝わってくる。
ケルト神話をベースとした設定は壮大であり、市井の人々の細かい描写と相まって、「実在した歴史」と錯覚してしまう程だ。飲(読)み口がマイルドな分、その熟成された世界観には驚きを禁じ得ない。
因みに、作中に登場するモンスターの名前が記憶にない場合は一度調べてみることをお勧めする。作者の茶目っ気に出会えるかも知れない。
北国の厳然たる風土で紡がれる少年と「師」の成長の物語は、まさに穏やかで力強いグレーンウヰスキーを想起させる。
読者諸兄も良質な本格王道ファンタジー作品を味わって頂きたい。
吟遊詩人の詩と調べに思いを馳せながら、乾杯――
書籍で読みたい。何度でも読みたい。
文庫本、上中下巻セットで3900円で発売されないかな?笑
少しずつ広がるゲイザーの世界。決して情報量過多とならないのは、読み手を最大限に考えて緻密に練られたプロットの賜物だ。
うねりやハネを利用して、キャラクターを生き生きと動かし、伏線をさり気なく蒔くと、気持ちいいほど最後は爽快にストーリーに花を咲かせる。
飛び抜けた言葉選びのセンスは、冷静に分析する気持ちさえも持っていかれ、いつしか文字の羅列に夢中になっている自分がいる。
文字だけで五感が揺さぶられる。
地の文、会話、描写の三要素を、場面に合わせてバランスよく組み合わせ、時には白熱させ、時には幻想的に、時には面白おかしく、話を紡いでいく。
話は王道だ。なのに、目新しさを感じる。
出てくるキャラクターに目新しい要素はないのに。なのに。
それは、執筆者の頭の中に無数の世界が広がっているからだと僕は確信している。言葉以上に膨大な設定がゲイザーの下地を支えている。
もし、つまらないと思うなら、夜更けにじっくり読むことをオススメする。
いつしか、ゲイザーの世界に溶け込み、主人公の成長を肌で感じ、心から応援している自分に気づくはずだ。
この物語は――少年が、闇祓いとして、そして一人の男として、成長していく物語です。読者もまた、少年の成長を見守り、あるいは共に成長を実感できる物語でもあると思います。
ところは、中世あるいは近代ヨーロッパにも似た世界、そしてその都市国家にも似た街、ブリギット。
その街を治めるレイン公爵家の庶子・ユウリスは、友人たちの呪いじみた遊びに端を発する、『闇』の顕現に出くわす。
そして出会う、美しくも強き白狼と、闇祓い《ゲイザー》の女・ウルカ。
白狼、そしてウルカと共に、ユウリスは『闇』と対峙し、そして以後、ブリギットを舞台に繰り広げられる、『闇』との戦いに身を投じることになる――。
これ以上は、物語をご覧くださいとしか言えません。ここで触るよりも、その方がきっと楽しいです。
また、ブリギットを軸に構成される作品世界、その紡がれた歴史、文化などに思いを馳せるのも、この物語の魅力です。
長い物語ですが、それだけ長く楽しめる、そういう物語です。
再度、改めて申し上げますが――物語をご覧ください。
面白いですよ!
このレビューは『7話妖猫の花嫁 前編 07傷痕』まで読んだ段階で書きました。
『0話白狼の森』の頭の少しを読んだ時点で魅入られました。
レビューの前にせっかくだからもう少し先まで読もう、
を繰り返していたら、
ずっと後になってしまいました。
大ボリュームなので夜な夜な少しずつ読み進めています。
ウルカおねえさんがかっこよすぎる。
私はこういう、強い女がすきです。
そのウルカおねえさんが、
本編で師匠として関わるうちに、
ユウリスくんの魅力も研ぎ澄まされていきます。
私はこういう、確固たる意思を持つ子もすきです。
新たな登場人物が追加されるたびに、
その魅力を引き出すまでの期間を、
既知の人物が手助けしてくれる。
読み心地がよいので、私もぱくります。
最後まで追っかけます。
同時に当分は、
「私のより『ゲイザー』を読め」
を言い続けます。