未分化の感情、通り過ぎる淡い体温。

この物語に描かれるのは喜びではない。悲しみでもない。だけど感情が揺れる。
笑うときにも泣くときにも震える、根っこのほうの感情なのではないかな、と思った。

抱きしめられる温かさも、見守られる心強さも、いつか手のひらからこぼれ落ちてしまうとして、それでも触れれば互いの身体の熱を感じずにはいられない。どうしようもなく人間だから。
何言ってんだと思ったら読んでみればいい。読み終わったら戻ってきて。何が手のなかに残っているか教えてほしい。

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