他者の言葉に惑わされるな、と教えてくれます。

 異世界へ転移する際、離ればなれになったヒロインにあたる先輩、本来、持てるはずの剣が持てなかった主人公が得た魔王が持つ剣などの謎…新しいファンタジーの形を思わせる設定が目を引く物語です。

 キャッチコピーには「宿命と自由。いずれかを選べ」とありますが、読み進めていく内に、ふと気付かされる事があります。

 人は多かれ少なかれ、自分にできる事と、自分がしなければならない事が別の場合があり、私達はどうにかこうにか折り合いを付けて暮らしていて、それは多くの物語の中に住むキャラクターにとっても同じ事だ、という事でした。

 この物語で、主人公はヒロインである先輩を探さなければならない、けれど真っ当な剣――少なくとも、Capture1の時点では、先代魔王の剣は真っ当ではない――を持つ事ができないなど、折り合いを付けなければならない点が垣間見えた気がしました。

 それが、宿命と自由を象徴するように感じる一方で、徐々に解き明かされていく謎と共に進む物語が、実はこの「しなければならない事」と「できる事」を一致させられる力を持つ主人公なのだとも読み解ける気がしました。

 その点に於いて、選択肢は選ぶ者が見つけるものであり、人に強制させられるものではないとも感じさせられ、それを描く物語に他にない力強さを存在させていると思います。