第16話
「全員で五十六人ですが、そのうち賞金がかけられているのが十三人ですね。
盗賊団のほぼ全員を捕縛してくれたので、盗賊団全体に賞金がかけられていた分も加算されます。
賞金で受け取られますか?
それとも奴隷競売にかけた販売益でうけとられますか?」
百婆ちゃんとヘルミさんが冒険者組合の受付と交渉してくれている。
のではなく、俺が前面に立って交渉している。
俺に交渉術を学ばせるつもりのようだが、人間関係は苦手なんだ。
でもそれは俺の所為じゃないと思う。
ぶっ飛んだ家訓を押し付けてきた百婆ちゃんのせいだと思う。
「五十六人の奴隷を競売にかけたらどれくらいの金額になるんですか?
今まで奴隷とかかわったことがないので分からないのです」
「そうですね。
今回は賞金額の方が完全に上回ると思います。
上回るどころか、五倍くらいになると思いますよ。
凶悪な盗賊団でしたからね」
「では賞金で受け取らせていただきます。
今回の件は冒険者としての評価になりますか?
鍛錬を兼ねて僕一人で捕縛したのですが」
「う~ん。
証拠がありませんからねぇ
現実に盗賊団を壊滅させ捕縛してくださった事実がありますから、パーティーとしての評価はされます。
ですが正直に申し上げて、ミトさんとヘルミさんの階級が突出して高いです。
ミトさんとヘルミさんがソウタさんに手柄を譲った、という疑いを持つ方が必ず現れます。
冒険者組合の評価員が同行していない成果は、公平に配分評価されます」
「ではこれはどうでしょうか。
僕は別の冒険者組合で白銀級の評価をもらっています。
こちらの冒険者組合で評価してもらえれば、確定になるのですが」
俺は百婆ちゃんが交渉してくれて手に入れた、白銀級の承認証を見せた。
それを見た受付は何度も俺と承認証を見比べている。
いい年をしたおっさんで経験も豊富なのだろうに、俺が白銀級に評価されているのが、そんなに不思議なのだろうか?
白銀級というのはそれほど高い階級なのか?
異世界の常識がない俺にはピンとこない。
「え~と、そうですね。
正式な承認証ですから、実力がおありなのは確かなのでしょう。
率直に申し上げれば、今回の盗賊討伐は銀級相当となります。
こちらの組合でも白銀級に相応しい成果を、ぶっちゃけた話をすれば利益です。
組合に利益をいただきたいのです」
凄く正直だね。
組合での評価が欲しければ、組合にそれだけの利益を収めろという事ですね。
これが異世界のやり方なのか、受付のおじさん個人の性格なのか?
まあどちらでもいいです。
時間が惜しいのです。
盗賊によって壊滅状態になった村の復興に手を貸してあげたいのです。
百婆ちゃんもヘルミさんも、手を貸す事を認めてくれました。
「じゃあこれを売ろう。
練習で狩った闘蜂だ。
白銀級承認証に必要な分だけ、正当な価格で売ろう」
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