第11話

「こいつらは闘蜂じゃ。

 数百匹の群れを作る厄介な魔蟲じゃ。

 最高階級の冒険者でも、装備が悪ければ死んでしまうくらい厄介じゃ。

 だが喰えば美味い!

 最高級の冒険者でも避ける魔蟲だから、珍味として高価に買い取ってくれる。

 冒険者組合の評価も鰻登りじゃ。

 どんどん狩れ!」


 百婆ちゃんは無茶を言う。

 闘蜂というのは魔蟲でくくられる昆虫の魔物なのだろう。

 実際に戦ってみて恐ろしく強い!

 立体的な機動で攻撃してくるので、鬼族でくくられるコボルトやゴブリン、オークやオーガとは全く比較にならない強敵だ!


 空中で立体的に回避する闘蜂を槍で的確にとらえるのは至難の業だ。

 しかも蜂と言われるくらいだから、尻の先に針がある。

 その針には猛毒が含まれているというのだから、普通ならとても恐ろしい敵だ!

 だが俺には全く脅威にならない。

 全ては百婆ちゃんが貸してくれた板金鎧の御陰だ。


 百婆ちゃんが貸してくれた板金鎧は全身を覆うタイプで、闘蜂の針を一切寄せ付けないのだ。

 板金鎧の下には全身を覆う鎖帷子を着ているし、鎖帷子の下にも全身式の柔らかい皮鎧を着ている。

 当然だが、皮鎧の下には皮膚を傷めないように柔らかな絹の肌着を着ているから、いったいどれくらい防御しているんだというくらい着込んでいる。


 百婆ちゃんの話では、その全てに魔法防御の魔法陣を刻み込んだり刺繍したりしていると言うのだから、俺はどんな攻撃を受けても平気ではないのかと思ってしまう。

 これは俺だけではなく、百婆ちゃんも同じだ。

 だから百婆ちゃんは闘蜂に積極的な攻撃をせずに悠々と見ているだけだ。

 ヘルミは金属が嫌いだという事で、肌着の上に柔皮鎧を着て、さらにその上に属性竜の鱗で作った全身式の鱗鎧を着こんでいる。


 二人とも手伝ってくれればいいのに、闘蜂が群がるのに全く反撃しない。

 もう闘蜂に群がられた人形のように見える。

 鬼族を相手にした時には手助けしてくれたのに、今回は全然助けてくれないところを考えれは、闘蜂はよほどいい練習台なのだろう。


「こら!

 急ぐからと型を崩すんじゃない!

 型破りと型知らずは違うのじゃぞ!

 自己流を創設するのはもっと強くなってからじゃ!」


「はい、はい、はい、分かりました。

 分かりましたから、黙ってて!」


 顔の周りも闘蜂で覆われているというのに、ちょと型がぶれたのがなんでわかるんだ?

 本当に百婆ちゃんは化け物じみているよ!


「不埒なことを考える前に手と足を動かす!

 もう少し足の運びが効率的になれば、槍太はもう一段強くなれるぞ。

 それに闘蜂は槍太が大好きな自然な旨みがタップリじゃ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る