第12話
「これは、いったい、どうしたのですか!?」
「ふぇふぇふぇふぇ。
玄孫の槍太が練習がてらに狩ったんじゃ。
どうだ、いい腕だろう。
ちゃんと値をつけてくれるのなら、欲しいだけ売ってやるぞ。
その代わり階級をあげてもらうがの。
ふぇふぇふぇふぇ」
「少々御待ちください!
直ぐに組合長を呼んで参ります!」
数百頭の闘蜂を全て狩った時には夕闇が迫っていた。
百婆ちゃんにどれだけ急かされても、今の俺にできる事は限られている。
早く正確には難しいのだ。
今回は実力を高める事を優先したので、早さよりも正確さを求めて一生懸命練習し、型を完全に身につけようとしたのだ。
百婆ちゃんは目先の金よりも安全を優先してくれた。
俺が初めての異世界に緊張し、心身ともに疲弊しているの察してくれていたのだ。
普通の宿屋より安全な冒険者組合併設の宿に部屋を借りてくれた。
当然食事も冒険者がたむろする冒険者組合併設の食堂で食べるから、宿屋の主人に毒を盛られる心配もない。
闘蜂を狩る練習中に、百婆ちゃんとヘルミがこの世界で気をつけるべき事を色々と教えてくれたのだが、そのせいで色々不安な事が頭に叩きこまれてしまった。
もう冒険者組合の宿以外に泊まれないくらい心配性になってしまった。
それだけの危険性があるのだろうけれど、中二病と揶揄するすくせに、俺にそんな不安をすり込んだら、無用な争いを引き起こすと分からないかね?
本当は親切で声をかけてくれた善人を、悪人と勘違いして殺してしまうぞ!
そんな事を考えているうちに、百婆ちゃんは俺が狩った闘蜂を売却する話と、俺の階級を上げる交渉を始めてしまった。
ぜんぜん想定したいなかったことの繰り返して、俺は混乱の極みだ!
ファンタジー小説やアニメの定番では、俺の階級が上がらないと、受けられる仕事に制限があるのだろう。
それと同時に、俺に交渉術を学ばせようとしているのだと思う。
百婆ちゃんとヘルミは、万が一自分達が死んでしまう事も考慮して、できるだけ早く持てる全てを伝えようとしているんだと悟った。
全て小説やアニメの定番から導き出した結論だけど、間違っていないと思う。
「ミトさん、ヘルミさん、本当に欲しいだけ売ってくれるんですか?」
奥から出てきた冒険者組合の組合長が期待に満ちた目で聞いている。
「ふぇふぇふぇふぇ。
掲示板に張り付けてあった値段で欲しいだけ売ってやろう。
ただし、槍太を白銀級にしてくれ」
「待ってくれ、白銀級はムリだ。
白金級以上に認定する場合は、二人以上の組合長の承認が必要になる。
他の組合でも同じだけの実績が必要になる」
「ここで数百匹分の闘蜂を全部買い取れないなら、闘蜂を他の冒険者組合に持ち込めば、白銀級くらいは直ぐに認めてくれるであろう。
闘蜂を全部買い取ってくれるなら、同等の魔獣を新たに狩れば済むことじゃ。
お主は白銀級に認めて承認証を発行する気があるのかないのか、それだけを返事してくれればいいのじゃ」
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