第13話

「ヘルミさん、それで体力がもつのですか?」


「うん?

 ああ、肉を食べないことを言ってるのね。

 ええ、大丈夫よ。

 まあ、色々不便なことがあるのは確かね。

 人間は雑食だから、魔窟内でも食料を現地調達できるけど、私達エルフには難しいから、多くの食糧を携帯する必要があるわ。

 もっともエルフは長生きで、時間をかけて成長すればいいし、必要な魔道具も時間をかけて集めればいいから、魔窟内にまで挑戦するエルフ冒険者の魔法袋保有率は高いわね」


 俺の訓練を優先して、次の冒険者ギルドに移動する途中でも狩りを続けているけれど、その度に気になるのはエルフのヘルミさんの食事内容だ。

 全く肉や魚を食べないし、卵や牛乳も駄目だ。

 それでは人間と一緒に冒険する場合、食事でもめるのは眼に見えている。


 だが百婆ちゃんはヘルミさんに合わせている。

 自分や俺の事よりも、ヘルミさんを優先して主食主菜は精進料理にしている。

 一族の家訓に料理を作れること、それも精進料理が作れることとしていたのは、エルフとの冒険を考慮してたのかと思うと、百婆ちゃんの異世界冒険にかける思いが伝わってきて怖いくらいだ。


 まあ、いい。

 俺も野菜の旨みを引き出した精進料理は嫌いじゃない。

 もちろん肉や魚の方が好きだけどね

 それに肉や野菜が食べられないわけではない。

 焚火で煮ている主菜の鍋は、昆布と茸で出汁をとったスープに、野菜と根菜を入れた絶品精進料理だ。

 主食は半潰しにした白飯に味噌を塗った、味噌焼きおにぎりというか、味噌たんぽというか、美味いうえに腹にたまる料理だ。


 もっとも俺はそれほど穀類が好きじゃない。

 主食の穀物は食べず、肉や野菜だけ食べる方が好きだ。

 だから焚火の周りには、大量の肉や魚が串に刺して焼かれている。

 牙兎や角兎の肉は結構美味い!

 同じ兎と名がついているから、日本で食べた兎に近い味なのだが、微妙に風味が違っている。

 それに加えて腿や腕、腹や脇の部位によっても味が違うから、飽くことなく美味しく食べられる。


「百婆ちゃん、明日は冒険者組合のある都市につくんだよね?」


「ああそうじゃ。

 それがどうかしたのか?」


「いや、正直夜営は疲れるよ。

 夜の闇の中からどんな魔物がでてくるのかと考えると、当直でなくても寝れなくて、寝不足になってしまうよ」


「軟弱じゃのぉ。

 日本にいる時に何度もキャンプさせて、夜営にも慣れさせておいたじゃろ」


「日本の山で夜営するのと、異世界で夜営するんじゃ全然違うよ。

 なあ、冒険者のチームって三人で大丈夫なの?

 日帰りなら問題ないだろうけど、長期の遠征だと三人じゃ十分な休憩がとれないんじゃないの?」


「ふぇふぇふぇふぇ。

 気がついたか。

 そうじゃ、できれば四人は欲しいのう。

 全員が六時間寝るためには、一人が二時間当直するとしても四人必要じゃからの。

 次の都市もいい出会いがあればいいのじゃがな。

 なかなかヘルミのような逸材はおらんよ」


 なるほど、冒険者組合を訪ねるのは信頼できる仲間を探すためでもあるのか。

 俺の階級を上げようとするのも、パーティーの信頼度のためかしれないな。

 次に行く冒険者組合が楽しみだ。

 

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