第18話
「おかあちゃん!
おねえちゃん!
ワァァァァァン!」
「エイマ!
ああ、エイマ!」
「ワァァァァァン!」
生きて、生きていてくれた!
あちらこちらで再会を喜ぶ家族がいる!
我慢しようと思っても、涙が止まらない。
男が人前で泣くもんじゃないと言われて育ったけれど、そんなことしったことか、今泣かないでいつ泣くんだ!
「ふぇふぇふぇふぇ。
これで終わったと思うなよ」
いま説教かよ!
後でいいだろ、後で!
「一分一秒遅れることで、死ぬ人間もいるのじゃ。
泣くのは女子供のする事よ。
男は黙って稼いで来い」
「百婆ちゃん、今の時代にそんな事を言っていたら、人権団体やフェミニスト団体に抗議されるぞ!」
俺は涙を拭って抗議したが、百婆ちゃんには柳に風だった。
「ふぇふぇふぇふぇ。
人権団体やフェミニスト団体ちゅうのは、千年女子供を護ってきた家訓にまで口出しするのか、随分と偉くて高圧的じゃのぉ。
だがここは異世界じゃ、そんな奴らはおらんのぉ。
いっそここに連れてきて、口で女衒や盗賊と戦えるか試してやりたいのぉ」
百婆ちゃんの殺気に小便ちびりそうになった!
異世界に来れるのがごく限られた適正者だけでよかった。
もし百婆ちゃんの恣意で連れてこれるのなら、気に喰わない人間を全員強制連行しただろう。
「分かったから。
分かったから俺の至らないところを教えて。
ちゃんと直すから!」
今回の件で思い知った。
俺はまだまだ視野が狭い。
日本のような平和な国では問題にならなくても、異世界では誰かの命にかかわってしまう!
しかも俺自身は百婆ちゃんが貸してくれた装備で何の被害も受けないのだから、後で受ける後悔と慚愧の念が半端ない。
「この村の男連中は女子供を守ろうとして死んでしまっておる。
主になって狩りをする者も、畑仕事をする者も、力仕事をする者もおらんのじゃ。
今度盗賊に襲われたら、無抵抗で捕まるしかないのじゃ。
無理無体を言う隣村に抗議すらできん。
いや、しっかりと教えてやろう。
不作になったら、自分達の村が飢えるくらいなら、隣村を襲って食糧を奪う事も、女子供を攫って売ることも辞さない、それがこの世界の村というモノじゃ」
頭をハンマーで思いっ切り殴られたような衝撃だった。
衝撃的過ぎて、百婆ちゃんの言葉を理解し消化するのに時間がかかり過ぎた。
理解できた時には、足に力が入らずその場に崩れ落ちそうになった。
こんな世界で、ちっぽけな俺に何ができるんだ?
百婆ちゃんの言ったように、人助けなど考えなければいいのか?
「ふぇふぇふぇふぇ。
男がいったん助けると口にした以上、責任もって最後まで助けんかい!
途中で投げ出すなど、竜飼院一族の名折れじゃ。
ついてこい」
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