第19話
「ふぇふぇふぇふぇ。
もう疲れたか。
まだ千匹も斃しておらんぞ」
百婆ちゃんも無茶を言う。
百人組み手でも最後まで戦えず途中でぶっ倒れるのが普通なのに、数百万匹の魔獣と戦わせるなんで無茶過ぎる。
最悪の場合でも百婆ちゃんが貸してくれている護りが発動するとは言え、スパルタ教育過ぎる。
まあ、でも、仕方がない。
エイマを見殺しには出来ない。
一旦自分でやり始めた事を途中で止めるわけにはいかない。
ここで止めたら、一生引きずる気がする。
それに、甘えだとは自覚しているが、俺が本当に困ったり危険な眼にあったら、百婆ちゃんとヘルミさんが助けてくれる。
そう確信できるだけの慈愛の視線を常に感じている。
それに赤蟻は斃せば斃すほど金になる。
一メートル級の獰猛な大型の蟻型魔蟲で強力な分、冒険者組合の買い取り額が高く売れ残る事もないのだ。
まあ、高値で売れないなら無理に売る必要もない。
百婆ちゃんが貸してくれている魔法袋は、無尽蔵になんでも入れて保管できる。
エイマたちの食料にすればいい。
俺はエイマたちを助けた責任を最後までまっとうすることにした。
安全な家を確保し、食糧を与え、衣服を整えることにした。
とはいえ、過保護にし過ぎてもいけないと百婆ちゃんに叱られた。
百婆ちゃんの言ってることはコロコロ変わる、と言いたい気持ちが全くないわけではないが、モノには加減があるのだ、と言われればそうかと思うしかない。
「ふぇふぇふぇふぇ。
職人に育てる事じゃ。
冒険者などいつ死ぬか分からんからな」
真剣に百婆ちゃんに相談したら、真面目に答えてくれた。
ヘルミさんが最近の傾向を助言してくれた。
比較的安全で、俺たちとの接点がある冒険者組合のある、千人規模の小都市の城壁内に家を購入し、エイマたちを保護する場所にした。
自給自足の村出身だから、自分たちが着る程度なら麻布や葛布を織ることも、皮を加工する事もできる女たちだ。
俺たちが狩った牙兎や角兎の皮で練習させれば、皮革職人として独り立ちする事も不可能ではないと、百婆ちゃんたちが断言してくれた。
俺は異世界での目的を見つけた。
俺は不幸なめにあっている女子供を助ける!
母子を保護するための家を作る。
女子供が独立して生活出来るだけの技術を学ぶ場所にする。
最終的に魔道具を作れるくらいの職人に育てられればいいけれど、ゴブリンやコボルト、オークや大鼠から皮鎧が作れれば、この世界で十分皮革職人皮鎧職人として生きて行けるという。
俺の誇りにかけて成し遂げて見せる!
百婆ちゃんと玄孫が異世界無双 克全 @dokatu
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