竜と神と人が交錯する壮大な世界——叶えたかったのはたった一つの約束

 ある日、妹の頼みで故郷を目指し、深い森に入った兄妹。そこで狼の群れに出会ってしまった二人ははぐれ、その別れが二人に課せられた大きな運命の始まりとなります。

 騎士見習いのセス、攫われてしまった妹リュナ、彼女を助けてくれた不死の剣士デュークに、森に馴染んだ少年シャル。翼持つ少女に、多くの謎を抱えた竜、そして魔王。読み進むにつれて、圧倒的な王道ファンタジーの世界が広がります。

 けれど、この物語に登場する魔王は、他の物語の魔王とは少し様子が異なります。なぜ彼が魔王と呼ばれるようになったのか。かつて魔王と共に戦った英雄の盟友ウィルダウと、セスにまつわる秘密とは。

 歴史物語であり、群像劇でもあり、けれど、最後まで読み終えたときに感じたのは、とてもシンプルな「誰かを大切に想い、救いたい」という愛の物語でもあったのかな、と感じました。
 愛と一口にいっても男女のそれもあれば家族愛、友愛など、その形はさまざまなのですが……。

 そうして緻密に作り込まれた世界観は、ともすれば硬くなりがちですが、若者たちの甘酸っぱい恋の様子や、ちょっと大人の恋愛模様もあり、ハイ・ファンタジーだけでなく、笑って泣ける、物語が好きな方すべてにおすすめの一作です。

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