第3話
少女が閉じ込められてから3か月。
積もり積もったガラス片の上に乗り、ついに窓枠に手が届いた。
だが窓を押しても開かない。
鍵がかかっていた。
この部屋の扉と同じかんぬきだ。
かんぬきは窓枠からさらに上、窓の中心部にあった。
少女はさらに一ヶ月、皿とコップを割っては破片を積み上げていった。
そしてついに、かんぬきにも手が届いた。
興奮をなんとか押さえつけながら、ゆっくりとかんぬきを外す。
カチャ、という音が静かに響いた。
窓を内側に引いてみた。…開かない。
外側に向かって押してみた。…開いた。
ガラスの足場が、少しずつ崩れ始めた。
少女は急いで細い窓枠によじ登った。
その途端、ガラスの山が崩れた。
窓の外を見ると、すぐ下に芝生。
やはり地下だった。
上を見ると、縄で作られたはしごが永遠と続いていた。
これを全部登ったら、すごく高いところに行ける。
少女はそう直感した。
はしごに手をかけ、体制を整えてから登り始める。
まだ朝だった。
太陽の光を浴びて、少女は気持ちよかった。
それから少女は休むことなく、はしごを登り続けた。
汗が垂れてきても拭おうとしない。
ただひたすら上へ、登っていった。
少女の頭の中には、あの時見たスズメの姿しかなかった。
翼を羽ばたかせて自由に飛ぶ姿。
その姿が鮮明に脳に張り付いている。
少女はその鳥に憧れていた。
そして自分もその鳥のようになれるだろうと信じて疑わなかった。
どのくらい時間が経っただろうか。
日は随分高く、もうお昼になっていた。
ついに少女ははしごを登り切り、城の中で一番突き出た高い屋根の頂上に辿り着いた。
ここはうっすらと雲がかかっているくらい高いところだった。
少女は風見鶏に掴まって、なんとか屋根の上に立った。
ここから見える景色は最高だった。
青い空、大きな森、抜き抜けていく風も気持ちいい。
下を見ると、城の庭にたくさんの人が集まっていた。
今日はちょうど城のみんなと各国の王様たちが集まる大きなパーティーの日だったのだ。
アリのように見える大勢の人々。
少女はとても愉快な気持ちになった。
周りの澄んだいい空気を、肺に入るだけ吸い込んだ。
ゆっくりと目を閉じ、そしてまた開く。
次の瞬間、少女は前のめりに飛び降りていた。
体がふわっと宙に浮く。
少女はその一瞬だけ、鳥になることができた。
それだけでもう、充分だった。
「きゃあーーーー!!!!」
絶叫がこだまする。
パーティーの客の一人が、落ちてくる少女に気付いたのだ。
次々と叫び声が上がり、手に持っていたグラスや豪華な料理が芝生に落ちる。
そして少女は、庭の中心に落ちた。
少女の背中から、血が広がる。
まるで、翼のように。
これで少女は紅い翼を手に入れた。
死んだ少女の顔は、笑っていた。
終わり
紅い翼 かしまからこ @karako
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