第十一夜 皐月の闇に
僕の希いを叶えてくれる?
僕は土に
生まれる前の姿になって
正しい姿で芽吹いて
あの人の希いを受け入れる
優しい花に、なりたいんだ。
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
アンゴラうさぎのしっぽのような綿雪が落ちてくる。月は降りしきる
「これで
確信めいて
いつしか、幻のように消えた
アールスメールゴールドを教えてくれた人。
心の器を充たす人。
心の
✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*
国家資格と卒業証書を手にしたアキラは、希望どおりの職種で働き始めている。
「心に
或る特別な美しい妄想を持っていた。
一方で年齢や性別という概念を持たなかった、ミコト。
「虫に
「あの子の淡い皮膚には
そんなふうにアキラが、
彼は衣替えの際、名前が印字された幼き日のタオルを、焦げ茶色の
自らの夢に向かって労を惜しまず
彼に学んで今一度、自分の生き方を見詰め直せた部分も無かったとは言えない。
ミコトは今ごろ、どうしているだろう。
消毒薬の匂い漂う白い建物の中を、歩き廻っているだろうか。
人間は不安なときほど動き回りたくなるものだ。そうやって気を紛らわせているつもりが、己を追い詰めている。素足で病室を
一度もミコトを見舞っていない。
しかしアキラは、ミコトの見舞いに花束を求めた。
黄金の薔薇を探し始める。
フローリストに黄金の薔薇は無かった。
しかし、真紅と雪白の薔薇にエミールピンクのスターチスを
ミコトは、花束を喜ぶだろうか。
最期の夜『薔薇は融ける』に続く
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