第八夜 お遊び
翌日も、アキラは
「やぁ、今日は、どう?」
声を掛ける前に確かめれば良かった。ミコトは眠っている。午后の早い時間だと言うのに、アキラの指に伝わる熱が痛い。昨日、売店へ連れ出したのが
「アキラさん?」
ベッドサイドに訪れたアキラの気配を、ミコトは察した。長い
「ミコトくん、大丈夫かい? 昨日、無理をさせただろうか」
そんなことないよ、と力なく
そして猫がするような小さい、ごく小さい音の、くしゃみをする。
「
真実に寒そうな様子で目を伏せる。
「誰に?」
「お……かあさん」
ミコトは「おかあさん」と、ぎこちなく言った。
「そう。でも、とても綺麗だよ。薔薇も蔓を剪定するだろう。そして、また、すぐに伸びるよ」
少年のぎこちなさには気付かない振りをして、アキラは話した。
薔薇から生まれた。そんな幻想が、しっくりとくる美しいミコトを前に、アキラは林檎を手に取る。
「皮を
「分からない。たぶん、この部屋にはナイフなんて無いよ」
ミコトの答えを受けて、アキラは売店で簡素な果物ナイフと
買ったばかりの小型ナイフで、林檎の皮を剝き始める。するすると一本の螺旋が出来上がっていく。
第九夜『おままごと』に続く
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